研究課題/領域番号 |
23591614
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
原田 和俊 山梨大学, 医学部附属病院, 講師 (20324197)
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キーワード | 悪性黒色腫 / シグナル伝達系 / 分子標的薬 |
研究概要 |
Wntシグナルは発癌、発生などに関与する重要なシグナル伝達系である。悪性黒色腫においても、Wntシグナルの異常な活性化が起こることが報告されていている。 そこで、当科で加療した悪性黒色腫患者から樹立した悪性黒色腫細胞株及び他の研究室から導入された悪性黒色腫細胞株を用いて、細胞株ごとのWntシグナルの活性化状況を調べることとした。これまで報告したように、Wntシグナル伝達系のkey moleculeである、beta-cateninの発現量を免疫組織染色とウエスタンブロットで検討した。その結果、細胞株ごとにbeta-cateninの発現量に差があるとことが解明された。 Wntシグナル伝達系が悪性黒色腫の増殖を促進する機序として、細胞周期に関与するcyclinを抑制するp16の転写をbeta-cateninが抑制するというメカニズムが提唱されている。そこで、今回われわれは、悪性黒色細胞株において、beta-cateninとp16の発現に相関関係があるかどうかを検討した。その結果、これらの2つのタンパクは発現には期待された相関関係が見出されなかった。 今後は、Wntシグナルがどのように、悪性黒色細胞株を増殖を促進するのかそのメカニズムを検索する予定である。また、Wntシグナルが、悪性黒色細胞株の増殖を促進していることを直接解明するため、RNAiを用いてbeta-cateninの発現を抑制し、細胞増殖は低下するかどうかを検討する予定である。さらに、Wntシグナルを直接阻害する薬剤(分子標的薬)が悪性黒色細胞株の増殖を抑制するかどうかも合わせて検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Wntシグナルがどのように悪性黒色細胞株の増殖を促進するのか、そのメカニズムが不明のままである。残念ながら、現在は仮説が提唱できていない。文献検索を詳細に行ない、仮説を立て、実験で確かめる必要ある。
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今後の研究の推進方策 |
Wntシグナルが悪性黒色細胞株の増殖を促進している直接的な証明はまだなされていない。本年度は、RNAiなどを用いて、悪性黒色細胞株でWntシグナルを抑制し、増殖抑制が引き起こされるかどうかを検討する。また、当研究室では、Wntシグナルをターゲットとしたsmall moleculeの導入が可能であるので、これを用いて、悪性黒色細胞株の増殖抑制効果を検討する。 さらに、現在使用されている薬剤の中で、Wntシグナル伝達系を抑制するものがあるかどうかを検索し、その薬剤が悪性黒色細胞株の増殖を抑制するのかどうかも検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Wntシグナルを抑制する薬剤を購入する。また、薬剤添加による下流遺伝子の活性化を検討することを目的とし、タンパクのリン酸化抗体を購入する。さらに、薬剤添加によりapoptosisが引き起こされた場合には、caspaseなどのapotosis実行酵素の発現を検出する抗体も購入予定である。 Wntシグナルが悪性黒色腫細胞株の増殖を促進していることが証明された場合には、上記の実験は昨年度に行う予定であったが、現在、まだこの仮説は証明されていない。そこで、次年度にこれらの試薬を購入することとした。 さらに、薬剤が悪性黒色細胞株に特異的に効果を示すことを証明するため、正常色素細胞初代培養株を購入し、上記の薬剤を添加する予定である。
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