研究課題/領域番号 |
23591615
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
奥山 隆平 信州大学, 医学部, 教授 (80292332)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Runx / p63 / p53 / 表皮 / 有棘細胞癌 |
研究概要 |
表皮細胞の増殖分化と発癌機構に関して、これまでp53ファミリー分子であるp63に着目して解析を進めてきた。さらに本プロジェクトでは、転写因子Runxに着目して解析を進めている。 RunxはRunx1~3と3分子がファミリーを形成しており、各々が2つの転写開始点を有するのでproximal typeとdistal typeの2タイプが存在する。Runx2は主に骨、軟骨で主に働いていることから、Runx1、3に焦点を絞って解析をスタートした。最初に表皮におけるRunxの発現を検討した。Western blotを行ったが発現量が低く、非特異的なバンドとの識別が困難であった。また、免疫組織染色法でもRunx1、3のシグナルは不均一であった。一方、PCR法でRNAレベルでの発現を検討したところ、分化に伴う大きな変化はみられないが、Runx1、3においてproximal typeとdistal typeの両者ともしっかり発現していることがわかった。 次に、培養表皮細胞中のRunx1、3の発現量を増減することで、その作用を解析することを目指し、アデノウイルスベクターの作成を行った。proximal type のRunx1、3を組み込んだアデノウイルスベクターが完成した。また、特異的なsiRNAを用いてRunx1、3の発現を抑制することが可能となった。 さらに、in vivoレベルで表皮におけるRunxの働きを解析するため、Runx1f/fマウスとRunx3f/fマウスを入手した。さらにdistal typeのRunx1を過剰発現するマウスも入手することができた。これらの遺伝子改変マウスはCre recombinaseの存在下でのみ、遺伝子発現が変化する。Keratin 5 Cre recombinaseマウスも入手できたので、現在、これらのマウスの交配を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表皮でのRunx1、3の発現の検討を行い、結果を得ることができた。また、Runx1、3の発現を増減させる系の構築も完了した。さらにin vivoでの解析を進めるため、Runxの遺伝子改変マウスの入手を行い、現在解析に用いるべく繁殖を行っている。このことから当初予定していた解析を順調に進めることが出来ていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Runx1、3を過剰発現する、もしくは低下させる系を構築できたので、Runx1、3発現量を変化させた場合の表皮細胞の増殖と分化の変化を明らかにする。また、microarrayを用いてRunxの下流で発現が変化する分子を網羅的に調べる。この過程でピックアップされた分子に関しては、その転写調節領域にRunx、さらにはp63が結合しないかクロマチン免疫沈降法を用いて解析する予定である。さらに、解析が可能な程度、Runxの遺伝子改変マウスが繁殖できた際には、Keratin 5 Cre recombinaseマウスと交配して、皮膚での形質の変化を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
In vitroでの解析は表皮細胞を初代培養し、遺伝子導入した上で、タンパク質とRNA等を回収して、分子細胞生物学的な解析をおこなうことが主体となる。そこで、microarray用の試薬等を含めた分子生物学的もしくは生化学的な試薬に対して研究費を用いる。また、遺伝子改変マウスの繁殖とgenotyping用の試薬に対しても研究費を用いる。 さらに情報を収集し、また一部の成果を発表するために、学会参加や共同研究の打ち合わせ等が必要となる。そのため、研究費の一部を旅費に用いる。 なお、当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため、次年度使用額が生じた。また、当初計画では、海外出張を本年度実施予定であったが、研究の進展状況により次年度実施することになったこともあり、次年度使用額が生じた。
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