研究課題
我々はメラノーマ患者において、血液循環腫瘍細胞 (Circulating tumor cells: CTCs)を用いて遺伝子変異を解析するシステムの構築をはかってきた。CTCsによる遺伝子解析を行うことで、(1)リアルタイムで体内の腫瘍細胞の状態がわかる、(2)侵襲の少ない採血で摂取できる、(3)経時的なモニタリングが可能、という利点があり、患者の予後や再発などを予測できる有用なバイオマーカーとして期待されている。我々はこれまでは患者の末梢血中から有核細胞を分離し、そこにHMW-MAA(Anti-High moleculr Weight-Melanoma Associate Antigen)抗体を標識し、マグネットビーズを用いてメラノーマ細胞のみを分離し、CTCsについてBRAFやKITなどの遺伝子解析を行っていた。CTCsは病期が進行すれば末梢血に多数出現するため採取しやすいが、病初期の段階はCTCsを分離する効率が大変低いという問題点がある。B7はT細胞共刺激因子の一つであり、細胞性免疫には欠かせない分子の1つであるが、そのホモログであるB7-H3は転移性メラノーマに高率に発現していることが報告されている。この抗体を利用してCTCsの採取効率を上げることにより、CTCsのバイオマーカーとしての有用性がより高まると考えられる。B7-H3抗体の併用による回収率の評価をマグネットビーズ法とFACS法で検討した。(1)マグネットビーズ法での回収率の比較では、888melでは差が見られなかったが、928melとMMG1においては、HMW-MAA抗体単独よりもB7-H3抗体を組み合わせた方が回収率が2から4倍高くなった。(2)FACS法での回収率の比較では、HMW-MAA抗体単独よりもB7-H3抗体単独や両者の併用の方が腫瘍細胞の検出率が高かった。
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