研究課題/領域番号 |
23591617
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉浦 一充 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70335032)
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研究分担者 |
室 慶直 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80270990)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 乾癬 / 表皮角化細胞 / エピジェネティクス / LEDGF / トランスジェニックマウス / MLL |
研究概要 |
エピジェネティクスとは塩基配列によらない遺伝情報の発現制御であり、癌や膠原病、アレルギー性疾患では、エピジェネティクスと病態の関与が報告されている。しかし、乾癬のKCにおけるエピジェネティクスの関与については、未解明のままである。一方、エピジェネティクス(クロマチンリモデリング)に影響を与える、ヒストン脱アセチル化酵素に対する阻害剤(HDAC阻害剤)は、乾癬の治療薬としても有望視されている。乾癬では活性化した表皮角化細胞(KC)からTh17細胞、制御性T細胞、Tip-DC、形質細胞様樹状細胞等の炎症細胞へのフィードバックも病態形成に重要である。Lens epithelium derived growth factor (LEDGF)はヒストンH3のK3,K4のメチル化酵素であるMLL1を誘導して標的遺伝子を活性化することが知られている。さらに、このMLL1は他のヒストンアセチル化酵素やクロマチンリモデリング因子と結合して広範なエピジェネティクス変化をもたらすことが示唆されている。本研究の目的は、乾癬皮疹部のKCにおいて核内に異所性に局在する、S期促進因子 LEDGFが、エピジェネティクスのひとつ、クロマチンリモデリングを介して転写促進をするか否かを検討し、もしそのようなクロマチンリモデリング機構が存在するのであれば、その分子病態を詳細に解析することである。 本年度の主たる成果は、LEDGFを表皮で過剰発現するトランスジェニックを作成したことである。表現系についての解析はこれから行うところであるが、このマウスは既存の乾癬モデルマウスとは全く異なる発症機序を持つモデルとなり、乾癬研究において有用なツールになると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスジェニックマウスを作成することに成功した。細胞実験においてもLY294002とU0126を同時に添加したときに、LEDGFとCDC7、STAT3等が核内から細胞質に移った。
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今後の研究の推進方策 |
トランスジェニックマウスを用いて研究を展開していく。細胞実験も以下のものを行う。乾癬のKCにおけるLEDGFの細胞質から核内への移行機構を解明すること。HaCaTあるいはHSC-1におけるLEDGFとSTAT3の細胞質から核内への移行機構阻害因子の解明培養KCにおける、各種阻害剤によるLEDGFと関連分子の細胞内局在の変化の検討私たちはHaCaTでは、LEDGFは細胞周期G1/S/G2/M期では核内に存在するが、G0期では細胞質に存在することを発見した。細胞周期の亢進にはPI3-Aktシグナル、RAS-Erk1/2シグナル、Jak-STAT3シグナル、等が重要であり、いずれのシグナルも乾癬KCで亢進している。各々のシグナル伝達阻害剤、LY294002、U0126、AG490等を用いて、LEDGFと関連タンパク質、さらにSTAT3が核内から核外に移行するか否かを検討する。私たちはすでに初期的な実験を行い、LY294002とU0126を同時に添加したときに、LEDGFとCDC7、STAT3等が核内から細胞質に移った。PI3-Aktシグナル、RAS-Erk1/2シグナルの別の阻害剤であるwortmaninとErk1/2 inhibitor IIを用いても、同様に局在の変化が起こるか否かを検討する。さらに、HDAC阻害剤であるトリコスタチンAにてもLEDGFとCDC7、STAT3等が核内から細胞質に移行することを確認している。別のHDAC阻害剤であオキサムラフラチンにても局在が変化するか否か検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
トランスジェニックマウスを用いた研究と細胞を用いた研究に研究費を使用する。
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