研究課題
皮膚筋炎(Dermatomyositis;DM)は皮膚と筋肉を病変の主座とする膠原病の一つである。その生命予後は、二大合併病態である悪性腫瘍と間質性肺炎が左右するとも言え、これらの病態解明とそれに基づく治療法の確立が急務である。悪性腫瘍合併という病型に特異的な自己抗体が近年同定され、その対応抗原がTIF1-γというTGF-βシグナル伝達経路の担い手分子であることが判明した。 本研究では、悪性腫瘍の存在がなぜ皮膚筋炎を惹起するかという疑問を解明していく目的で、(1)悪性腫瘍組織におけるTIF1-γ分子の異常発現が自己抗体産生を誘導し、(2)その自己抗体である抗TIF1-γ抗体が調節性T細胞に異常をもたらし皮膚筋炎の病像形成に関与する、という二段階の病態仮説を検証することを目指している。家兎網状赤血球とcDNAプラスミドを用いたin vitro転写翻訳系によりTIF1-γ蛋白を合成し既報の免疫沈降法により、さらには今回の研究期間内に開発したルミノメーターを用いたELISAにより抗TIF1-γ抗体の同定を行った。次にTIF1-γの腫瘍と皮疹部における作用動態を推測する目的で、腫瘍と皮膚の病理切片における抗TIF1-γ抗体、抗リン酸化Smad2/3抗体、抗Smad4抗体を用いた免疫組織染色を行った。 DM患者に合併した2例の乳癌組織と1例の肺癌組織ではTIF1-γとSmad4は細胞内にほとんど検出されず、リン酸化Smad2/3が核内に優位に染色された。これは腫瘍組織におけるTIF1-γのagonistic作用を示唆しているが、TIF1-γとSmad4が細胞内のどこにも強く染まらなかった理由については見出されていない。皮膚においてはリン酸化Smad2/3の局在は腫瘍組織と結果を同じくしたが、TIF1-γとSmad4は核および核周囲に染色され腫瘍組織とは動態が異なることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
抗TIF1-γ抗体の有無により、腫瘍組織と皮疹部におけるTIF1-γおよびその関連分子の動態が決定されているわけではないことが判明したので、TIF1-γの動態様式が自己抗体産生と直接結びついてはいないことが判明してきた。一方、抗TIF1-γ抗体陽性患者に併存することのある抗TIF1-α抗体の同定法を新たに開発、腫瘍組織におけるTIF1-αの染色を確認できた。
TIF1-αがretinoic acid receptor α(RArα)と相互作用し、I型インターフェロンの発現を上昇させる、との論文が他から発表されたので、この系がDMの皮疹部や腫瘍組織で動いているかを免疫組織化学で調べる。培養細胞実験でこれら2分子の相互作用、およびI型インターフェロンの発現上昇を確認する系を確立する。
各種抗体の購入、培養細胞実験における遺伝子導入やRT-PCRの試薬購入、ELISAキットの購入など。
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