研究課題/領域番号 |
23591618
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
室 慶直 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80270990)
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研究分担者 |
杉浦 一充 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70335032)
小川 靖 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10567754)
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キーワード | 皮膚筋炎 / 悪性腫瘍 / 自己抗原 / 自己抗体 |
研究概要 |
皮膚筋炎は皮膚と筋肉を病変の首座とする膠原病の一つである。その生命予後は、二大合併病態である悪性腫瘍と間質性肺炎が左右するとも言え、これらの病態解明とそれに基づく治療法の確立が急務である。悪性腫瘍合併という病型に特異的な自己抗体が近年同定され、その対応抗原がTIF1-γというTGF-βシグナル伝達経路の担い手分子であることが判明した。 本研究では、悪性腫瘍の存在がなぜ皮膚筋炎を惹起するかという疑問を解明していく目的で、1.悪性腫瘍組織におけるTIF1-γ分子の発現異常が自己抗体産生を誘導し、2.その自己抗体である抗TIF1-γ抗体が調節性T細胞に異常をもたらし、皮膚筋炎の病像形成に関与するという二段階の病態仮説を検証することを目指している。 皮膚筋炎に合併した悪性腫瘍組織と皮疹部におけるTIF1-γ、リン酸化Smad2/3、Smad4の免疫組織染色による発現形式の実験結果から、腫瘍組織におけるTIF1-γの作用は従来言われているTIF1-γのSmad2/3に対する結合がSmad4より優位となるagonistic modelとTIF1-γがSmad2/3/4の会合を抑制するantagonistic modelのいずれかに分別することは困難であったため、本年はTIF1-γと同じく自己抗原になっているTIF1-αとの協調作用が存在し、それが上皮間葉系細胞転換をひきおこすシグナルとなっているという仮説のもとに実験を進めた。遺伝子導入やsiRNAを用いた培養細胞実験の結果からは、明確な2分子の協調作用は見出すことができなかった。しかし、これまで悪性腫瘍組織におけるTIF1-γ分子の発現は低下しているという免疫組織染色の結果について、抗体の種類を変更して実験を行った結果、腫瘍組織ではTIF1-γの発現は正常組織に比して上昇していることが明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予想された二つのモデルのいずれのモデルが適応できるか、について明確な判別が困難であったことより、別の機能経路を考慮すべきと考え、その有力な候補としてTIF1-γとTIF1-αの2分子の協調作用を考えた。しかし、培養細胞実験の結果からは、明らかな協調作用は見出しえなかった。 一方、免疫組織染色に用いる市販の抗TIF1-γ抗体を別標品に変更して実験を行ったところ、これまでと異なる実験結果が得られ、この結果を考慮して、新たな分子協調経路について探っていくことを考えた。
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今後の研究の推進方策 |
TIF1-γ、Smad4、p-ERK1/2の動態とSTAT3リン酸化の間に協調作用があるかについて皮膚筋炎患者に合併した悪性腫瘍組織の免疫染色を行う。また、TIF1-γやSmad4の遺伝子導入やsiRNAを用いた培養細胞実験を行い、イムノブロットなどによって、p-ERK1/2の動態とSTAT3リン酸化の間に協調作用があるかについて調べる。さらに、リン酸化STAT3とTGFβ刺激の協調作用による上皮間葉系細胞転換が進行する可能性について追及する。
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次年度の研究費の使用計画 |
TIF1-γと同じく自己抗原になっているTIF1-αとの協調作用がTIF1-γに存在し、それが上皮間葉系細胞転換をひきおこすシグナルとなってるという仮説のもとに実験を進めた。遺伝子導入やsiRNAを用いた培養細胞実験の結果からは、明確な2分子の協調作用は見出すことができなかった。しかし、これまで悪性腫瘍組織におけるTIF1-γ分子の発現は低下しているという免疫組織染色の結果について、抗体の種類を変更して実験を行った結果、腫瘍組織ではTIF1-γの発現は正常組織に比して上昇していることが明らかになってきた。以上のように、当初、予想された結果が得られなかったものの、異なる実験系を立案できる結果が生じたため。 TIF1-γ、Smad4、p-ERK1/2の動態とSTAT3リン酸化の間に協調作用があるかについて皮膚筋炎患者に合併した悪性腫瘍組織の免疫染色を行う。また、TIF1-γやSmad4の遺伝子導入やsiRNAを用いた培養細胞実験を行い、イムノブロットなどによって、p-ERK1/2の動態とSTAT3リン酸化の間に協調作用があるかについて調べる。さらに、リン酸化STAT3とTGFβ刺激の協調作用による上皮間葉系細胞転換が進行する可能性について追及する。 以上の実験を遂行するために、新たに抗体染色に必要な抗体の購入や、培養細胞試薬、遺伝子導入に必要な合成オリゴヌクレオチドなどの試薬の購入、研究結果の成果発表の旅費等に使用する。
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