研究課題/領域番号 |
23591620
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
青山 裕美 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (90291393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 尋常性天疱瘡 / 診断 / デスモグレイン / デスモソーム / 自己抗体 / 自己免疫性水疱症 |
研究概要 |
難治な自己免疫性水疱症である天疱瘡の診断治療に直結する病因病態を解明する.1.自己抗体の病因性をより鋭敏に反映する検査法の開発.現在市場で販売されているデスモグレイン(Dsg)3ELISAキットプレートを0.05mM EDTA処理しDsg3の立体構造を破壊し、ELISA法を施行する。その値を以下の公式にて計算値として立体構造Dsg3抗体価を得る。従来法Dsg3ELISA値―EDTA処理ELISA値=立体構造Dsg3抗体価 成果(1)得られた値の信頼性を検討した。EC1-3に結合する抗体を検出することができることを明らかにした。(2)病因性との関連性をvitroと患者の臨床症状と比較検討した。より病因性の高い抗体価を検出することができることが明らかになった。(3)疾患での違い。尋常性天疱瘡には使えるが落葉状天疱瘡には適応できないことが明らかになった。2.皮膚組織で生じる棘融解と炎症病態形成機序の解明.平成24年度の課題であるが、実験系を確立した。アッセイを行う前段階までの準備が完了した。3.表皮細胞内の天疱瘡病態シグナル伝達系の解明を行う.抗Dsg3抗体のエピトープの違い。AK23IgG→デスモソームの立体的な接着を阻害するがDsg3の消失を誘導しない抗体 AK23IgM→デスモソームの立体的接着を阻害しないがDsg3の消失を誘導する抗体 の二種類がある。これまでの報告ではAK23IgGは病因性があり、IgMは病因性がないと報告されている。しかし、我々はDsg3の消失が天疱瘡病態の中心的な役割をしていると考えている。この相違点、Dsg3欠損デスモソームを誘導できる抗体の病因性があるか?作用機序は?を解析する。その結果、病態がさらに解明され、より病態に密着した正確な診断、治療選択や効果判定を行うことが可能になる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) EDTA処理抗DsgELISAキットの評価 ○基礎研究:新規の検査法であり、検出される抗体価の正確なドメインの絞り込みと病因性に関する生化学的な検討。完了しBr J Dermatol. 2012に受理された。○臨床研究:実際の臨床症例で、臨床経過と重症度との関連性を証明した。投稿中。(2)棘融解形成機序 デスモソームのDsg3とデスモソームに組み込まれていないDsg3に異なる結合性をもつIgM型、IgG型Dsg3抗体を用いてDsg3欠損デスモソーム形成機序を検討する。天疱瘡患者IgGを表皮細胞に作用させサイトカイン産生能を検討する。サイトカイン産生能のアッセイ方法を検討し、準備を完了した。平成24年度は測定のみで終了する。(3)細胞内シグナル伝達機序 未施行
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今後の研究の推進方策 |
棘融解形成機序 網羅的なスクリーニングと予測した経路の解析を行う [プロテオミクス解析による検討]正常培養表皮細胞に同じエピトープを持つが、Fc部位の違いにより病因性の異なる二種類の抗体すなわち、病因性Dsg3モノクロIgG抗体と非病因性Dsg3モノクロIgM抗体を作用させる。また、エピトープが異なりFc部位が異なるため病因性のないモノクロIgG抗体を作用させ得たサンプルをプロテオミクス解析で検討する。異なるタイムコースで検討することにより、抗原抗体反応後の反応のどのステップまで進む抗体がどのように細胞内反応を誘導するのか、明確になる足がかりとなる。[p120ctnに着目した検討]→シグナル伝達経路の解析につながる。 我々はDsg3欠損デスモソーム形成が病因の中心的な役割をすると考えているが、Dsg3の消失メカニズムの調節因子としてp120ctnとDsg3の結合性の変化を生化学的に検討する。[EDTAELISA法の値とDsg3分解能の関連性の検討]昨年度われわれは、EDTAELISA法によって得た立体構造抗体の抗体価が天疱瘡病態活動性指標(PDAIスコア)とより強く相関することを見いだした。これらの抗体の病因性シグナルを検討するためにDsg3分解能との相関を検討する。[サイトカイン誘導能]天疱瘡の中でも炎症細胞を誘導する落葉状天疱瘡、疱疹状天疱瘡の抗体をもちいて、培養表皮細胞にサイトカインの産生誘導が生じるかどうか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品 主に培養細胞と培養に必要な消耗品、生化学的試薬、免疫学的試薬(サイトカインアッセイキット、免疫沈降法試薬)、抗体の精製(外部業者委託)費用、プロテオミクスの費用に私用する。研究成果の発表を行い、今後の方針について意見交換を行う。論文作成を予定している。
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