研究課題
小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)は、小麦を摂取後に運動することによりアナフィラキシーなどの重篤な症状が誘発される食物アレルギー疾患である。我々はこれまでの研究で、消化管からのアレルゲンの吸収増加が、WDEIAにおける症状誘発要因の一つであることを明らかにしている。今年度は、ラット好塩基球細胞(RBL-2H3)の脱顆粒を指標にした血中小麦アレルゲンの生物学的活性定量法の構築を目的に、鶏卵アレルゲンであるオボアルブミン(OVA)特異IgEを保有するラットの感作条件を決定した。OVA感作したBrown Norwayラットの血清を用いてRBL-2H3細胞をIgE感作し、OVA刺激による脱顆粒反応を評価した結果、10%血清で感作し10μg/mLのOVA刺激で脱顆粒反応が起きることを確認した。血中の抗原濃度は数ng/mLと推測されるため、さらに感度を上げる必要かあることが分かった。加水分解小麦含有石鹸の使用により発症したWDEIAの原因抗原は、通常のWDEIAの主要原因抗原であるω5-グリアジンとは異なることが示唆された。そこで、加水分解小麦によるWDEIAの原因抗原解析を行い、主要抗原がγ-グリアジンであることを明らかにすると共に、そのIgE結合エピトープ(QPQQPFP)を同定した。加水分解小麦中ではIgE結合エピトープのグルタミン(Q)はグルタミン酸(E)へ加水分解されていることから、エピトープ配列のQをEに置換したペプチド(EPEEPFP)を合成しIgEの結合性を調べた。その結果、Eへ置換したペプチドに対するIgEの強い結合が認められたことから、感作エピトープはEPEEPFPであると考えられた。
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