研究課題
発癌は、紫外線照射や化学物質によって細胞の核DNAが障害された結果、癌遺伝子の発現や癌抑制遺伝子の変異によって誘導される。しかし最近、細胞をとりまく炎症環境が発癌プロセスに重要な役割を演じている可能性が示唆された。本研究では、紫外線により容易に発癌が誘導される表皮特異的Stat3C(K5.Stat3C)トランスジェニックマウス及びp53KOマウス、T,B細胞を欠くRag2KOマウス、およびTh17サイトカインであるIL-22を欠くIL-22KOマウスをかけあわせ表皮角化細胞の紫外線発癌における炎症細胞とりわけT細胞の関与を明らかにすることを目的とする。(結果1)TおよびB細胞の欠損したRag2KOと表皮特異的にStat3を発現する表皮高発癌性のK5.Stat3CマウスをかけあわせてK5.Stat3;Rag2KOマウスを作製し、K5.Stat3Cマウスをコントロールとして、UVB(200mJ/cm2)週3回照射を行い、4ヶ月後の耳介および背部皮膚の変化を評価した。外観上はK5.Stat3;Rag2KOおよびコントロールマウスの耳、背部に炎症を認めたが両群に差は認めなかった。耳介皮膚組織についても両群共に軽い表皮肥厚および表皮細胞の異型を認め(carcinoma in situ)、差は認めなかった。この結果より、UVB照射による表皮細胞異型の出現において、TあるいはB細胞の関与は認められないことが示唆される。(結果2)K5.Stat3;IL-22KOマウスを作製し、K5.Stat3Cマウスをコントロールとして同様に紫外線発癌誘導実験を行った。6ヶ月間の長期におよぶ紫外線照射の結果、いずれの群も皮膚癌は発生し、その病理組織学的な差異も認められなかった。以上のことより、紫外線発癌においてIL-22は関与しないことが判明した。
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