研究課題/領域番号 |
23591626
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小林 信彦 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (70316074)
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研究分担者 |
森 俊雄 奈良県立医科大学, 医学部, 研究教授 (10115280)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | DBcAMP / 紫外線感受性 / 神経芽細胞腫 |
研究概要 |
健常人や色素性乾皮症などのDNA修復(ヌクレオチド除去修復:NER)欠損疾患のサンバーン、悪性腫瘍、神経症状の予防にはDNA損傷の生成予防とともにNERの亢進が重要である。これまでに、cAMP濃度上昇とCREB活性化によりNERが亢進することを報告してきた。市販されている薬剤の中にこれらの作用を持つものがあり、これらの外用あるいは全身投与により、皮膚および脳神経系細胞のNERを亢進し、紫外線皮膚傷害や神経症状を予防する新しい方法を開発するための基礎的実験を行っている。平成23年度は、cAMP濃度上昇、CREB活性化作用を持つ薬剤としてDBcAMP(アクトシン)を使用した。まず、培養細胞として頻用している正常ヒト線維芽細胞を用いた。予想に反して、線維芽細胞ではDBcAMP投与により紫外線抵抗性とはならなかった。その理由として、もともと充分なDNA修復能を持つ細胞のNER活性をさらに亢進させることは困難であると考えた。そこで、線維芽細胞よりもDNA修復能が低い細胞を使用することを考えた。我々は、ラットを用いて、神経系細胞のNER活性は線維芽細胞よりも低いこと報告している。このため、理化学研究所より神経芽細胞腫と乏突起神経膠腫の培養細胞を購入し、紫外線感受性を線維芽細胞と比較した。神経芽細胞腫細胞は線維芽細胞よりも紫外線感受性であり、NER活性が低いことが示唆された。そこで、神経芽細胞腫に4日間DBcAMPを処理した後に紫外線を照射したところ、DBcAMPが神経芽細胞腫細胞の紫外線感受性を回復させることがわかった。色素性乾皮症の神経症状発症には、NERで修復される酸化的DNA損傷であるサイクロプリンが関与することが推測されている。研究分担者の森は、サイクロプリンを認識するモノクローナル抗体の樹立に世界で初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
線維芽細胞よりも紫外線感受性の高い細胞を探すのに時間を要したため。また、DBcAMPは異なる濃度域で異なる生理活性を有するため、紫外線抵抗性を与える濃度域の決定に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に行う予定であったDBcAMPによる神経芽細胞腫細胞のNER亢進の検討を行うが、研究分担者の森が樹立したCPD、6-4PPを認識するモノクローナル抗体を用いたELISA法を使用するため、次年度以降の研究は順調に進展することが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引き続き、培養細胞の購入・維持のための培地・血清・プラスチック器具、各種アッセイのための試薬購入、成果発表のための学会出張旅費、論文英文校閲・投稿料などへの使用を予定している。
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