研究課題/領域番号 |
23591626
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小林 信彦 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (70316074)
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研究分担者 |
森 俊雄 奈良県立医科大学, 医学部, 研究教授 (10115280)
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キーワード | DBcAMP / 紫外線感受性 / 神経芽細胞腫 / DNA修復 |
研究概要 |
健常人や色素性乾皮症などのDNA修復(ヌクレオチド除去修復:NER)欠損疾患のサンバーン、悪性腫瘍、神経症状の予防にはDNA損傷の生成予防とともにNERの亢進が重要である。これまでに、cAMP濃度上昇とCREB活性化によりNERが亢進することを報告してきた。市販されている薬剤の中にこれらの作用を持つものがあり、これらの外用あるいは全身投与により、皮膚および脳神経系細胞のNERを亢進し、紫外線皮膚傷害や神経症状を予防する新しい方法を開発するための基礎的実験を行っている。 平成23年度は、cAMP濃度上昇、CREB活性化作用を持つ薬剤としてDBcAMP(アクトシン)を使用した。理化学研究所より神経芽細胞腫と乏突起神経膠腫の培養細胞を購入した。神経芽細胞腫細胞は線維芽細胞よりも紫外線感受性であり、NER活性が低いことが示唆された。そこで、神経芽細胞腫細胞にDBcAMPを処理した後に紫外線を照射したところ、DBcAMPが神経芽細胞腫細胞の紫外線感受性を回復させることがわかった。 平成24年度は、神経芽細胞腫細胞にDBcAMPを処理し、紫外線DNA損傷の修復を検討した。DBcAMP処理は神経芽細胞腫細胞のNERを亢進させることがわかった。次に、DBcAMP処理の至適濃度を決定する実験を開始したが、Sorenson BioScience社製1.7mlマイクロ遠心チューブの不良が判明し、実験の進行が妨げられた。 色素性乾皮症の神経症状発症には、NERで修復される酸化的DNA損傷であるサイクロプリンが関与することが推測されている。研究分担者の森は、サイクロプリンを認識するモノクローナル抗体の樹立に世界で初めて成功した。現在、ELISA法による定量や免疫蛍光染色法による可視化の実験系の確立を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すでに報告されているように、Sorenson BioScience社製1.7mlマイクロ遠心チューブの不良が判明した。ELISA法でDNAを一本鎖化する際に100℃で加熱していた。加熱によりマイクロ遠心チューブからフェノール系の溶出があり、OD 260吸光度測定によるDNA定量が不正確であったことが判明した。そのため、それまでに行った実験を全てやり直す必要があり、研究が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
DNAの一本鎖化をアルカリ処理で行うように実験法を改善し、今年度に行う予定であったDBcAMPによる神経芽細胞腫細胞のNER亢進の検討を再開する。また、細胞内cAMP濃度を上昇させるforskolinが日本でもサプリメントとして発売されたため、forskolinによるNER亢進についても検討を行う。実験法を改善したため、次年度以降の研究は順調に進展することが期待される。また、研究のさらなる推進のため、週1日の研究補助者を使用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引き続き、細胞培養のための培地・血清・プラスチック器具、各種アッセイのための試薬購入、論文英文校閲・投稿料などへの使用を予定している。また、実験補助者に対する謝金の支出も予定している。
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