研究課題/領域番号 |
23591628
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
石井 健 東邦大学, 医学部, 准教授 (50296670)
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キーワード | 自己免疫 / 天疱瘡 / 自己抗体 / 細胞接着 |
研究概要 |
天疱瘡疾患群の中でも最も難治性である腫瘍随伴性天疱瘡の病態解明を目的として、 ファージディスプレイ技術を用いて患者リンパ球より抗デスモグレイン3(desmoglein 3, Dsg3)モノクローナル一本鎖抗体を複数単離しファージ抗体ライブラリを作成し自己抗体の詳細な解析を行った。 腫瘍随伴性天疱瘡患者より単離した末梢血単核球よりmRNAを抽出、ファージディスプレイ技術をもちいてイムノグロブリンの重鎖、軽鎖をリンカーで連結した一本鎖抗体をファージ表面に提示するファージ抗体のライブラリを作成した。この抗体ライブラリをDsg3 ELISAプレートを用いてDsg3に反応するファージ抗体を20個単離した。重鎖のCDR3のアミノ酸配列により単離された抗体は、4群に分類された。また、抗体遺伝子の解析によると3つの抗体群はVH1-46を、1抗体群はVH1-2遺伝子を使用していることが明らかになった。また、器官培養ヒト皮膚を用いた病的活性測定法、また培養ケラチノサイトを用いた病的活性測定法により3つの抗体が細胞接着阻害活性を持っていることが判明した。 通常の尋常性天疱瘡抗体と比較すると腫瘍随伴性天疱瘡の抗体は、細胞接着阻害活性が弱かった。また、エピトープも通常の尋常性天疱瘡抗体と違うことが明らかになった。 これらの単離されたモノクローナル抗体は腫瘍随伴性天疱瘡の患者血清中の抗体の特性を反映しており、腫瘍随伴性天疱瘡の病態解明に役立つと考えられた。この結果は、皮膚科の主要研究雑誌(Journal of Investigative Dermatology)に投稿し受理されている。 現在は、病的抗体に対する抗イディオタイプ抗体の単離と病的活性を阻害するペプチドの単離を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度7月に所属機関が変更となったため、研究施設の整備をするために研究を予定どおり遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は病的抗体の病的活性を阻害するペプチドの単離をphage display peptide library kitをスクリーニングする予定である。単離してきたペプチドのシークエンスを行いペプチドのコンセンサスシークエンスを決定する。また、ペプチドが病的抗体のデスモグレイン3への結合能を阻害できるか競合ELISA法で確認する。さらに、病的活性阻害能は、器官培養ヒト皮膚を用いて抗体の水疱形成能が阻害されるかで確認する。 また、研究成果を国内外で発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度7月に所属機関が変更となったため、研究施設の整備をするために一部の研究を予定どおり遂行することができなかったため次年度使用額が生じた。 次年度の研究費は病的抗体の病的活性を阻害するペプチドの単離、ペプチドの精製、阻害活性の検討などに使用する計画である。 また、研究成果を国内外で発表、論文投稿にも研究費を使用する予定である。
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