研究課題/領域番号 |
23591629
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
石河 晃 東邦大学, 医学部, 教授 (10202988)
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キーワード | 天疱瘡 / デスモグレイン / デスモソーム / 免疫電顕 |
研究概要 |
天疱瘡の水疱形成機序は未解決の問題である。近年開発された水疱形成能を有するヒト抗デスモグレイン3(dsg3)モノクローナル抗体とヒト皮膚を用いた形態学的手法により尋常性天疱瘡の水疱形成機序を詳細に解析することが本研究の目的である。具体的には包埋後染色免疫電顕法により病原エピトープを正常ヒト皮膚上に電顕レベルでマッピングすること、器官培養中の正常ヒト皮膚を用いて抗体結合から水疱形成、デスモソーム消失までの形態および分子構造変化を経時的に明らかにする。23年度にうまくゆかなかった免疫電顕法のエピトープマップについてまず、基質となる正常ヒト皮膚のブロックの新規作成を行った。すなわち正常ヒト皮膚を凍結固定し凍結置換により化学固定を用いずに免疫染色が可能な電顕用のブロックを作成した。また、ヒト皮膚の器官培養に2種の抗dsg3モノクローナル抗体を真皮内注入し、経時的に表皮の変化と抗体の沈着を観察した。その結果、病原性を持つPX4-3抗体は22時間後には棘融解を来すこと、病原性を持たないPX4-4抗体は棘融解を起こさないことが明らかになった。また、dsg1に対するモノクローナル抗体についてもIgGタイプの抗体と単鎖Fvタイプ(scFv)の抗体をファージディスプレイ法にて作成、生成し、25年度の実験のための十分料の抗体を作成した。また、それらも器官培養中の正常ヒト皮膚に真皮内注射し、棘融解が生じる抗体と生じない抗体があることを確認した。今後はこれらの抗体注射から棘融解発生までを電顕、免疫電顕で解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年に研究代表者が勤務先変更となり、研究体制を整えるために時間を要した。24年度は研究室のインフラ、研究協力者の人的資源を迎え、倫理申請なども整え、計画を遂行し始めることができた。しかし、まだ遅れは否めず、やや遅れている、と自己評価したい。25年度は遅れを取り戻せると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
正常ヒト皮膚を数ミリ大に細切し培養液中にて器官培養を行う。この皮膚に皮内針を用いてモノクローナル抗体を皮内注射することにより起こる形態学的変化を抗体沈着の分布とともに時間経過を追って詳細に観察する。指摘濃度に希釈した抗体を真皮内に局所注射し、設定した的確な時間おきに固定、蛍光抗体法、電顕法、免疫電顕法の検体としてブロック作成を行う。蛍光抗体法では表皮細胞間のIgG の沈着の進行度を、電顕法ではデスモソームの変化、ケラチン線維の変化、細胞間離開の進行度を、免疫電顕法ではデスモソームの変化と抗体結合との時間的関係を検討し、抗体結合と水疱形成に伴う形態変化を経時的に明らかにする。 さらに水疱形成前後におけるdsg3 分子およびそのほかのデスモソーム構成分子(デスモプラキン、プラコグロビン、デスモコリン1,3,デスモグレイン1,プラコフィリン1)を免疫電顕法により観察する。棘融解が生じた後、デスモソーム構造が消失することが知られているが、細胞内に接着板がendocytosis されるのか、分子が細胞膜に離散してゆくのかそれ以外の機序があるか明らかになっていない。ケラチン退縮との関係も含め検討してゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年に研究代表者が勤務先変更となり、研究体制を整えるために時間を要した。24年度は研究室のインフラ、研究協力者の人的資源を迎え、新たな倫理申請などもととのえ、計画を遂行し始めることができたが、インフラ、人的資源整備のために時間を費やしたため、消耗品購入はあまり執行されず、未使用額が生じた。今後は24年度の成果を元に本格的に免疫電顕を中心とした実験を遂行するため、抗体、試薬、ダイヤモンドナイフなどの消耗品購入、さらには成果発表のための学会出張旅費、論文作成費などでの使用が見込まれる。
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