研究課題/領域番号 |
23591631
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
鈴木 良弘 日本大学, 医学部, 助教 (80206549)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | TRAIL / ROS / melanoma / endoplasmic reticulum |
研究概要 |
1.TRAILおよびKATP阻害剤による小胞体ストレスおよびCaspase-12活性化の解析:TRAILおよびKATP阻害剤の小胞体ストレス分子GRP78、XBP-1発現レベルに対する作用をウエスタンブロット法で解析した。その結果、TRAIL はXBP-1のみを増加させ、さらにプロセッシングによる活性化も誘導することがわかった。一方、アポトーシス誘導作用を示さないタプシガギンは、XBP-1だけでなくGRP78の発現を増強した。これらの結果はTRAIL はタプシガギンとは異なるストレス反応を惹起し、TRAILとタプシガギンのアポトーシス誘導能の違いはGRP78誘導の有無によることが示唆された。TRAILによる小胞体ストレスの誘導は、小胞体膜に存在するCaspase-12のプロセッシングと活性化によってさらに確認できた。電位差依存性カリウムチャネル、カルシウム依存性カリウムチャネルならびにミトコンドリアKATP に対する特異的阻害剤を用いた解析から細胞膜型KATPが特異的にTRAIL によるアポトーシスを増強すること、この増強には小胞体ストレス依存性アポトーシス経路が関与することを初めて明らかにした。2.TRAILによるROS産生とTRAIL感受性:TRAILによって細胞内およびミトコンドリア内ROSが増加し、このROSがXBP-1ならびにCaspase-12活性化に関与することが示唆された。またTRAILはメラノサイトではTRAIL受容体DR4/DR5が発現しているにもかかわらず、TRAILによるミトコンドリア内ROS産生が見られないことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の目的は、(1) TRAILおよびKATP阻害剤による小胞体ストレスおよびCaspase-12活性化の解析と(2) TRAIL感受性増強シグナル伝達の解析であった。(1) に関しては、研究実績の項目で述べたように、小胞体ストレスおよびそれによるCaspase-12依存性アポトーシス経路の関与を明らかにできた。これまでCaspase-12によるアポトーシス経路の重要性はげっ歯類では確立されているが、ヒトではCaspase-4がその役割を果たし、Caspase-12は重要ではないと見られてきた。しかし本研究はヒトのアポトーシスにおけるCaspase-12の重要性を示し、TRAIL誘導アポトーシスの増強における新しい分子標的となる可能性を示唆した。(2) に関しては、ROSが小胞体ストレスおよびCaspase-12活性化を制御してTRAIL感受性に関与する可能性を見出した。したがって、目的はほぼ達成されたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1.TRAILによるROS産生の分子機構:どのTRAIL受容体がこの産生に関与するか、またその産生源がミトコンドリアかどうかを電子伝達系阻害薬を用いて解明する。2.ミトコンドリア由来O2-による小胞体ストレス誘導の分子機構:ROSの産生源がミトコンドリアであったときは、そのROSがどのようにして小胞体ストレスを惹起するのかを調べる。3.Caspase-12およびXBP-1の重要性の確認:Caspase-12経路と知られているアポトーシス経路であるCaspase-8依存性extrinsic pathway、Caspase-9依存性intrinsic pathwayとの関係を検討する。また、Caspase-12およびXBP-1のgene silencingをおこない、その重要性を明確にする。4.TRAIL誘導アポトーシスおよび小胞体ストレスのカルシウム依存性の検討:タプシガギンによる小胞体ストレス誘導は小胞体カルシウム涸渇によることが知られている。さらに、本研究によりTRAILはタプシガギンとは異なるモードの小胞体ストレスを惹起することが示された。そこで、TRAILによる小胞体ストレスにおけるカルシウムの役割を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.物品費として、ルーチンの細胞培養用消耗品の他、蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーによるアポトーシスおよびROS測定用各種蛍光プローブ、Caspase-12およびXBP-1のgene silencing用siRNAと抗体、Caspase-8/9/3/7活性化測定試薬およびウエスタンブロット解析用抗体などを購入する。2.研究成果発表用費として論文発表 (Int J Oncol in press)用費(掲載料、カラーチャージなど)、国際学会参加費として使用する。3.当初予定していた謝金は不要となった。
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