研究課題/領域番号 |
23591635
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
芝木 晃彦 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (40291231)
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研究分担者 |
清水 宏 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00146672)
氏家 英之 北海道大学, 大学病院, 助教 (60374435)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / 水疱性類天疱瘡 / 17型コラーゲン / ヒト化マウス / 疾患モデル動物 / IgG1/IgG4 / 抗体サブクラス / 補体活性化 |
研究概要 |
1)抗ヒトCOL17-IgG1抗体およびIgG4抗体のCOL17ヒト化新生児マウスへの投与抗ヒトCOL17FabとヒトFcγ1およびFcγ4を用いてリコンビナント抗ヒトCOL17 IgG1キメラ抗体(rhIgG1)およびリコンビナント抗ヒトCOL17 IgG4キメラ抗体(rhIgG4)を作製した。いずれの抗体も正常ヒト皮膚およびCOL17ヒト化マウス皮膚に反応した。Complement fixation assayおよびC1q binding assayで両抗体の補体活性化能を評価したところ、予想通りIgG1は高い補体活性化能を有し、IgG4は極めて低い補体活性化能しか有さないことがわかった。新生児COL17ヒト化マウスに投与したところ、補体活性化能の高いrhIgG1に加え、補体活性化能のきわめて低いrhIgG4も皮膚脆弱性を誘発できることが分かった。以上より、抗ヒトCOL17抗体はCOL17ヒト化新生児マウスにおいて補体活性化を介さない経路で皮膚脆弱性を誘導することが示唆された。2)抗ヒトCOL17抗体のC3KO/COL17ヒト化新生児マウスおよびCOL17ヒト化新生児マウスへの投与 C3KOマウスとCOL17ヒト化マウスを交配し、C3KO/COL17ヒト化マウスを作製した。C3KO/COL17ヒト化マウス血清中には補体C3が存在しないことをELISA法で確認した。そのC3KO/COL17ヒト化マウスにrhIgG1とrhIgG4を投与したところ、いずれにおいても皮膚局所における補体活性化は見られなかったものの、皮膚脆弱性が誘発されることがわかった。以上より、COL17ヒト化新生児マウスにおける皮膚脆弱性は補体活性化を介さない経路でも誘導されることがより直接的に示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)抗ヒトCOL17-IgG1抗体およびIgG4抗体のCOL17ヒト化新生児マウスへの投与 rhIgG1とrhIgG4を作製し、抗原に対する反応性や補体活性化能、COL17ヒト化マウスにおける病原性の評価など、すべて計画通りに施行した。予想に反し、補体活性化能の極めて低いrhIgG4が病原性を有していた。2)抗ヒトCOL17抗体のC3KO/COL17ヒト化新生児マウスおよびCOL17ヒト化新生児マウスへの投与 C3KO/COL17ヒト化新生児マウスの作製に難渋したが、ようやく個体数がふえつつあるため抗体投与を開始した。当初は水疱性類天疱瘡(BP)患者IgGを投与する計画としていたが、rhIgG1/rhIgG4の病原性を補体ノックアウトマウスで確認することが優先と考え、それらの抗体を投与した。以上、抗体作製、抗体投与実験、補体活性化能の評価をすべて終了しており、おおむね計画通り研究が進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究結果にて、抗ヒトCOL17抗体のCOL17ヒト化新生児マウスにおける補体活性化を介さない皮膚脆弱性誘発機序の存在が示唆されたが、成体マウスにおける病態が同様かどうかは不明である。したがって平成24年度は当初の計画通り、C3KO/Rag-2KO/COL17ヒト化マウスを作製し、植皮免疫した野生型マウスから精製した脾細胞をC3KO/Rag-2KO/COL17ヒト化マウスに移植することでアクティブBPモデル作製し、表現型を評価する。この実験により、持続的に抗体が産生される状況下でBPにおける補体の役割を解析することができる。 また、抗ヒトCOL17抗体の補体活性化を介さない皮膚脆弱性誘発機序の解明にも着手する。BP患者抗体を培養ケラチノサイトに投与すると、COL17タンパクの発現量が低下し培養皿との接着が弱まることが報告されている(Iwata H, et al. J Invest Dermatol 2009)。同様の方法で、培養ヒト角化細胞におけるCOL17タンパク量をrhIgG1/rhIgG4抗体投与の有無で比較する。さらに、培養細胞にrhIgG1/rhIgG4抗体とともにタンパク分解酵素阻害剤などを投与しCOL17タンパクの量に影響を及ぼすかどうかを観察することで、rhIgG1/rhIgG4抗体の作用機序を明らかにする。 C3KO/Rag-2KO/COL17ヒト化マウスで病勢が低下する場合は、BPアクティブモデルにおいては補体活性化が必須と考えられるので、平成25年度は計画通りアクティブBPモデルの治療実験を行う。アクティブBPモデルも補体活性化を必要としないことがわかった場合はFabやIgG4による治療は成り立たないので、アクティブBPモデルにおける補体活性化を介さない皮膚病変発症機序の詳細な解明を行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度末前後に人件費(約18万円)や学会参加費(約12万円)の支払いを行っており、実質的な次年度使用額は3万円程度になる予定である。今年新たに研究計画に追加した「抗ヒトCOL17抗体の補体活性化を介さない皮膚脆弱性誘発機序の解明」に用いる試薬や、マウスの植皮、脾細胞の精製、脾細胞移植、モデルマウスの抗体価測定、HE染色、各種インヒビターの購入、ウエスタンブロットやELISAに用いる試薬・実験キットの購入に33万円、実験動物の購入に10万円、実験を行うにあたり必要となるプラスチック製品(ピペットのチップ、エッペンドルフチューブなど)に10万円、情報収集および学会発表の旅費として20万円、印刷代や論文投稿料などに10万円、計約83万円の使用を計画している。
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