研究課題/領域番号 |
23591635
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
芝木 晃彦 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (40291231)
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研究分担者 |
清水 宏 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00146672)
氏家 英之 北海道大学, 大学病院, 助教 (60374435)
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キーワード | 自己免疫疾患 / 水疱性類天疱瘡 / 17型コラーゲン / ヒト化マウス / 疾患モデル動物 / IgG1/IgG4 / 抗体サブクラス / 補体活性化 |
研究概要 |
1)水疱性類天疱瘡(BP)患者のIgGのCOL17ヒト化新生児マウスおよびC3KO/COL17ヒト化新生児マウスへの投与:前年度までに、補体活性化能をほとんど有さないリコンビナント抗ヒトCOL17 IgG4キメラ抗体(rhIgG4)のCOL17ヒト化新生児マウスへの投与実験によって、抗ヒトCOL17抗体は補体活性化を介さない経路で皮膚脆弱性を誘導することが示唆された。今年度はBP患者IgGの投与実験を行った。その結果、COL17ヒト化新生児マウスのみらなずC3KO/COL17ヒト化新生児マウスにおいても皮膚脆弱性が誘発されることがわかった。以上より、BP患者IgGは補体活性化を介さない経路でCOL17ヒト化新生児マウスにおける皮膚脆弱性を誘導できることを初めて直接的に証明した。 2)Fcレセプターブロッカー投与実験:抗体が炎症細胞活性化を惹起する機序として、補体活性化を介する系のほかにFc-Fcレセプターの相互作用を介する系が挙げられる。この機序の関与を確認するために、COL17ヒト化新生児マウスにFcレセプターブロッカーを投与したのちにrIgG4を投与したが、皮膚脆弱性の抑制は見られなかった。以上より、rIgG4による皮膚脆弱性の誘導はFc-Fcレセプター相互作用非依存性であることが示された。 3) 培養ヒト角化細胞におけるCOL17タンパク量の測定:BP患者抗体を培養ケラチノサイトに投与すると、COL17タンパクの発現量が低下し培養皿との接着が弱まることが報告されている。培養ヒト角化細胞におけるCOL17タンパク量をhIgG1/rhIgG4抗体投与の有無で比較したところ、いずれの抗体もコントロール抗体に比べて有意にCOL17タンパク量を減少させることが示された。抗体結合によるCOL17減少が補体活性化非依存性に皮膚脆弱性を誘導することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)抗ヒトCOL17-IgG1抗体およびIgG4抗体のCOL17ヒト化新生児マウスへの投与:rhIgG1とrhIgG4を作製し、抗原に対する反応性や補体活性化能、COL17ヒト化マウスにおける病原性の評価など、すべて計画通りに施行した。さらに、Fcレセプターブロッカー投与実験を行い、rhIgG4の病原性はFc-Fcレセプター相互作用非依存性であることを示した。 2)抗ヒトCOL17抗体のC3KO/COL17ヒト化新生児マウスおよびCOL17ヒト化新生児マウスへの投与:C3KO/COL17ヒト化新生児マウスの作製に難渋したが、個体数が確保できたため、当初の計画通りBP患者IgGを投与し病原性を評価した。rhIgG1/rhIgG4の投与実験はすでに終了している。 3) 抗ヒトCOL17抗体の補体活性化を介さない皮膚脆弱性誘発機序の解明:当初の計画になかった項目であるが、培養ヒト角化細胞に抗体を投与しCOL17タンパク量の変化を観察する実験を行い、タンパク量の有意な減少を確認した。 4) Rag-2KO/C3KO/COL17ヒト化マウスを用いたアクティブBPマウスモデルの作製:この実験に用いるマウスはRag-2, C3およびマウスCOL17のトリプルノックアウトであり、作製に難渋している。現時点で十分な個体数が確保できていないため、アクティブモデルの作製に至っていない。 以上、4)は実施に時間を要しているが、当初予定していなかった補体活性化を介さない皮膚脆弱性誘発機序の解析が進んでおり、全体として十分な成果が得られていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
この研究結果にて、抗ヒトCOL17抗体のCOL17ヒト化新生児マウスにおける補体活性化を介さない皮膚脆弱性誘発機序の存在が示された。皮膚脆弱性誘発の作用機序として、抗体結合に伴うCOL17タンパク量の減少が示唆された。膜通過タンパクであるCOL17の細胞外ドメインに抗COL17抗体が結合すると、COL17は内在化(internalization)を来すと報告されている(Kitajima Y, et al. 1998, Hiroyasu S, et al. 2013)。ただし、内在化後にCOL17タンパク量が減少する機序はいまだ不明である。我々は細胞内タンパクの分解機序としてユビキチン-プロテアソーム系に注目し、解析を進める予定である。 成体マウスの皮疹発症における補体活性化の関与を解析するために、C3KO/Rag-2KO/COL17ヒト化マウスを用いたBPアクティブモデル作製を計画しているが、前述のとおりC3KO/Rag-2KO/COL17ヒト化マウスの作製に難渋している。十分な個体数が得られた際には、アクティブモデルを作製し、免疫した持続的に抗体が産生される状況下でBPにおける補体の役割を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は4000円で、今年度はほぼ予定通りの合計額を使用した。次年度は、「抗ヒトCOL17抗体の補体活性化を介さない皮膚脆弱性誘発機序の解明」に用いる試薬や、マウスの植皮、脾細胞の精製、脾細胞移植、IgGの抽出および精製、モデルマウスの抗体価測定、HE染色、ヒト角化細胞の培養に用いる物品の購入、ウエスタンブロットやELISAに用いる試薬・実験キットの購入に30万円、実験動物の購入に10万円、実験を行うにあたり必要となるプラスチック製品(ピペットのチップ、エッペンドルフチューブなど)に6万円、情報収集および学会発表の旅費として24万円、印刷代や論文投稿料などに10万円、計約80万円の使用を計画している。
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