研究課題/領域番号 |
23591640
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
竹原 和彦 金沢大学, 医学系, 教授 (50142253)
|
研究分担者 |
長谷川 稔 金沢大学, 大学病院, 講師 (50283130)
松下 貴史 金沢大学, 医学系, 助教 (60432126)
|
キーワード | 全身性強皮症 / 制御性B細胞 / IL-10 |
研究概要 |
制御性B細胞はIL-10産生を介して過剰な免疫反応や炎症を抑制する。これまでは自己免疫疾患モデルマウスを用いて制御性B細胞の機能解析が進められてきた。昨年度は、全身性強皮症患者と健常人の末梢血中の制御性B細胞を測定し比較検討した。さらに本年度は、サイトカイン誘導性線維化モデルマウスを用いてIL-10産生制御性B細胞の役割を解明に取り組んだ。 B細胞の表面に発現している分子を解析したところ、CD24とCD27がIL-10陽性と陰性で発現が大きく違っており、IL-10産生制御性B細胞はCD24high CD27+のフェノタイプを有していることが明らかとなった。次に健常人24人、全身性強皮症24人、皮膚筋炎3人、尋常性天疱瘡/落葉状天疱瘡、2名のPBMC中のIL-10産生B細胞とCD24hiCD27+B細胞の頻度を解析した。結果は、IL-10産生B細胞は健常人で平均11%、強皮症は6%と有意に減少していた。IL-10産生B細胞と同様にCD24hiCD27+B細胞は健常人と比較して、全身性強皮症で有意に減少していた。皮膚硬化の重症度別に解析を行ったところ、軽症型の強皮症の方がより減少している傾向に有った。 サイトカイン誘導性線維化モデルマウスにおけるIL-10産生制御性B細胞の機能解析にはCD19欠損マウスを使用した。CD19欠損マウスはIL-10産生制御性B細胞が存在しないため、制御性B細胞の機能解析に有用である。野生型マウスとCD19欠損マウスにサイトカイン誘導性線維化モデルを誘導したところ、両者の間に有意な差は認められなかった。 以上より、制御性B細胞は重症度とは相関しておらず、サイトカイン誘導性線維化モデルマウスでもその役割が少ないことから、線維化病態促進への関与は少なく、全身性強皮症の発症に深く関与している可能性が示唆された。本研究結果は今後の治療応用に意義あるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
Regulatory B細胞による抗線維化治療の可能性の検討を行う。野生型マウスの脾臓から採取したリンパ球をフローサイトメトリーでregulatory B細胞(CD1dhighCD5+B細胞)とnon-regulatory B細胞(CD1dlow CD5-B細胞)に分離し、サイトカイン注入と同時にマウスに移入する。Regulatory B細胞を移入したマウスとnon-regulatory B細胞を移入したマウスの線維化を比較検討する。もしregulatory B細胞を移入したマウスでnon-regulatory B細胞を移入したマウスに比べ線維化が抑制されれば、線維化に対するRegulatory B細胞による新規治療法の開発につながる。さらに、Regulatory B細胞の皮膚線維芽細胞に対する抑制能の検討を行う。野生型マウスの皮膚組織から線維芽細胞株を樹立する。これらの線維芽細胞を、フローサイトメトリーを用いて分離したregulatory B細胞(CD1dhighCD5+B細胞)ないしnon-regulatory B細胞(CD1dlow CD5-B細胞)と48時間共培養し、線維芽細胞のコラーゲン産生能に対する影響を解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度はマウスの成育がおくれたため、研究費の未使用額が生じた。 次年度は、マウスの成育も順調であるため以下のような研究を予定している。 Regulatory B細胞による抗線維化治療の可能性の検討ならびに、Regulatory B細胞の皮膚線維芽細胞に対する抑制能の検討を行う予定で、マウスの飼育費および試薬購入費に研究費を使用する予定である。
|