研究概要 |
円形脱毛症は組織特異的な自己免疫疾患とされ、毛包の自己抗原にたいして細胞障害性T 細胞が集簇し自己免疫反応を起こしていると推測されている。本研究ではヒトの円形脱毛症病変部においてTh1、Tc1 ケモカインであるCXCL10発現が毛包表皮細胞において亢進し、それをリガンドとするTh1、Tc1 細胞が著明に浸潤していることが明らかとなった。またこれらTh1、Tc1 細胞の走化性をリアルタイムに観察するとCXCL10 に対して著明に亢進していた。一方、TARC に対しては強い走化性を示さなかった。これらは急性期によく観察されるが、慢性期においても毛包周囲にCD8 陽性のTc1 細胞が持続的に浸潤していることも判明した。この走化性の活性化は細胞内カルシウム濃度の上昇やアクチン重合の亢進によるものであった。Th1 細胞、Tc1 細胞の浸潤を阻害するものとして、抗ヒスタミン薬の効果を観察した所、オロパタジンと共培養したされたリンパ球はその走化性が著明に阻害され、またCXCR3 発現を抑制していた。またカルシウム濃度やアクチン重合も低下させていたことから、オロパタジンは急性期円形脱毛症において一定の改善効果をもつのではないかと推測された。 これらについては、Ito T, et al. J Dermatol Sci 2013, 72,68-71 と Ito T et al. J Dermatol Sci 2013, 69, 140-147. にまとめて報告した。また海外学会を含めて学会発表をおこなった。
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