研究課題/領域番号 |
23591646
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山崎 修 岡山大学, 大学病院, 講師 (90294462)
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研究分担者 |
森実 真 岡山大学, 大学病院, 助教 (80423333)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | パントンバレンタインロイコシジン / 黄色ブドウ球菌 / せつ / 好中球 / PVL / フェノール可溶性モジュリン / 国際情報交流 / フランス |
研究概要 |
(1) PVL、PSM毒素発現制御機構の解明黄色ブドウ球菌より産生されるパントンバレンタイン型ロイコシジン(PVL)やフェノール可溶性モジュリン(PSM)の皮膚病変部での発現機構と病態形成を解明し、侵襲性の全身性感染症との関係について調査する目的で研究した。黄色ブドウ球菌のグローバルな毒素制御因子であるAgr(accessory gene regulator)、SarA(staphylococcal accessory regulator A)、SigB(sigma factor B)の遺伝子欠損株を作製しin vitroでの PVL産生能について検討し、組み合わせにより数種類のPVL高発現株を作成した。in vitroではSigBの欠損株がPVL高発現株であった。高発現株をウサギ皮膚に接種し、PVL陽性基準株、PVL陰性株と形態的、病理組織学的な比較検討を行ったが、有意差はなかった。PVLが発現するためにはある特別な環境が必要であることがわかった。(2) PVL、PSMの線維芽細胞やケラチノサイトに与える影響PVLによる壊死の病態解明を目的に好中球以外の細胞を介した炎症の惹起や好中球の活性化については検討した。ケラチノサイトや培養線維芽細胞を使用し、PVL毒素を暴露させ、IL-8の産生についてリアルタイム-PCRとELISA で測定した。PVLの線維芽細胞に与える影響についてはIL-8mRNAレベルが8時間後では有意差はなく、24時間後ではLukF-PV、 LukS-PVの刺激でともにコントロールよりも有意に高かったが、ELISAでは各群に有意差はなかった。PVLのケラチノサイトに与える影響についてはIL-8mRNAレベルが8時間後でLukF-PV、LukS-PVともにコントロールよりも有意に高く、さらにLukF-PV+LukS-PVで相加作用が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PVL、PSM毒素発現制御機構の解明や病態形成については、概ね予定通り実施したが、PVL、PSMの血清抗体価および毒素量のELISAシステムの構築については、担当する大学院生の数が少ないこと、東日本大震災の影響で共同研究している東北大学大学院農学部からの精製毒素の供給(recombinant LuKS-PV、LuKF-PV)が一時的に途絶えたこと、PVLのモノクローナル抗体が海外研究協力者から分与されなかったことなどを理由で、このプロジェクトについては研究着手が遅れ、停滞している。 まず、ウサギせつモデルの血清で検討していく予定で、システムが構築されれば、健常人コンロコントロールで抗体価を測定予定であり、倫理委員会に申請する。
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今後の研究の推進方策 |
PVLの毒素発現機構の解明については昨年度の研究により動物実験での再現が困難であることが予想されるので、PVLによる病態形成への関与について重点を置いて進めていく予定である。(1) PVLのケラチノサイトに与える影響:ケラチノサイトに、PVL毒素を暴露させ、IL-8以外の他のサイトカインの産生についてリアルタイム-PCRとELISA で測定する。(2) PVL、PSMの血管内皮細胞に与える影響:培養血管内皮細胞を使用し、PVL、PSM毒素を暴露させ、IL-6、IL-8、IL-12、TNF-α、IFNβなどの産生についてELISAキット、リアルタイム-PCRで測定する。またHumanβデフェンシン(HBD)やLL-37の抗菌ペプチドについても検討する。また、好中球をPVLで刺激して、その上清と培養血管内皮細胞を暴露させ、その影響にについて検討する。(3) 黄色ブドウ球菌性全身感染症との関係についての疫学調査:当院および関連病院における黄色ブドウ球菌性の重症全身感染症(壊死性肺炎、心内膜炎、骨髄炎、敗血症など)から分離された株について、PCR法にてPVLのスクリーニングを行う。臨床情報については、特に皮膚病変(せつ、膿瘍)の合併の有無や既往歴の調査も行い、PVL陽性例と陰性例の比較を行う。また現在までのPVL皮膚感染症の患者の追跡調査(再発の有無、肺炎などの全身性感染症の発症の有無)を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) 培養血管内皮細胞を購入予定である。上記の計画を遂行するためには、リアルタイム-PCRのプライマーなどは既存のもので行う予定であるが、ELISA法はL-6、IL-8、IL-12、TNF-α、IFNβなどの産生について、一部は既製品のELISAキットが必要である。またケラチノサイトや血管内皮細胞の培地は継続的に必要である。疫学調査を予定しており、各施設へ郵送する郵送料、分離培養する培地、PCR試薬などが必要である。(2) 研究成果については第15回国際ブドウ球菌学会(ISSSI)で発表予定であり、旅費等に使用する。
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