研究課題/領域番号 |
23591650
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
浅田 秀夫 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60252681)
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研究分担者 |
森井 武志 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (70264851)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 薬剤性過敏症症候群 / DIHS / GVHD / HHV-6 / HHV-7 / ヒトヘルペスウイルス / 再活性化 / 制御性T細胞 |
研究概要 |
薬剤性過敏症症候群(DIHS)は重症型薬疹の1つであるが、その病態形成にHHV-6などのヒトヘルペスウイルスの再活性化が、重要な役割を担っているものと考えられている。しかし、DIHSにおけるHHV-6の再活性化機序ついては今なお不明な点が多い。われわれは、急性GVHDとDIHSとが極めて類似した病態であることに着目し、急性GVHDの病態研究を手掛かりとして、DIHSの病態解明を目指している。今回の研究では、制御性T細胞(Treg)を中心とした免疫調節系が、DIHSおよび急性GVHDの病態形成にいかに関わっているのかを検討する目的で、末梢血ならびに皮疹部におけるTregの動態を検討した。その結果、末梢血中ではTregの動きは両者で類似していたものの、皮疹部においては浸潤リンパ球に占めるTreg の割合がGVHDでは持続的に低値を示していたのに対し、DIHS では皮疹出現からHHV-6再活性化に至るまでの期間に著しく増加することを見出した。また、われわれは限られた特定の薬剤がDIHSを引き起こすことに着目し、これらの特定の薬剤が、体内に潜伏感染しているヒトヘルペスウイルスの再活性化を直接誘発する可能性についても検討した。代表的なDIHS原因薬であるテグレトール内服群と非内服コントロール群について、唾液中のHHV-6、HHV-7の定量を行った結果、テグレトール内服群と非内服群との間で、唾液中のHHV-6量には有意差が見られなかったものの、HHV-7については、非内服群に比べ内服群においてウイルス量が高い傾向がみられた。特にテグレトール長期内服群でHHV-7の異常高値を呈した症例があったことから、DIHS原因薬とHHV-7再活性化との間に何らかの関係がある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DIHSやGVHDにおいては急性期に末梢血中のTregが増加することが報告されており、TregがHHV-6の再活性化に関与している可能性が疑われている。今回の研究で皮疹部においてはGVHDとDIHSでTregの動きが異なることが判明したが、この知見は、DIHSの皮膚症状やHHV-6の再活性化のメカニズムを考える上で重要であるといえる。さらに今回、代表的なDIHS原因薬であるテグレトール内服中の患者では、DIHS症状がなくても唾液中のHHV-7量の増加がみられることを見出したが、この知見もDIHSにおけるヒトヘルペスウイルス再活性化のメカニズム解明の手がかりとなる発見であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今回われわれは、DIHS原因薬を内服している患者では、薬疹の出現以前に唾液中のHHV-7量が増加していることを見出したが、今年度は症例数をさらに増やして昨年得た知見を検証すると共に、DIHS原因薬を内服している患者の唾液中からHHV-6/HHV-7感染細胞の検出と同定を行い、感染細胞内でのウイルスの状態を解析し、HHV-6/7再活性化メカニズムの解明を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
唾液中のHHV-6/7感染細胞の同定、同定された細胞培養系を用いたウイルス感染や再活性化実験を計画している。細胞培養用試薬、抗体、遺伝子解析用試薬を購入する予定である。
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