研究課題
薬剤性過敏症症候群(DIHS)は重症型薬疹の1つであるが、その病態形成にHHV-6などのヒトヘルペスウイルスの再活性化が、重要な役割を担っているものと考えられている。しかし、DIHSにおけるHHV-6の再活性化機序ついては今なお不明な点が多い。われわれは、急性GVHDとDIHSとが極めて類似した病態であることに着目し、急性GVHDの病態研究を手掛かりとして、DIHSの病態解明を目指している。初年度の研究で、末梢血中の制御性T細胞(Treg)の動きがDIHSおよび急性GVHDの両者で類似しているものの、皮疹部においては浸潤リンパ球に占めるTreg の割合がGVHDでは持続的に低値を示したのに対し、DIHS では皮疹出現からHHV-6再活性化に至るまでの期間に著しく増加することを見出した。さらに今回は、Tregの遊走や活性化に関わるケモカインでの1つであるTARCについて、DIHSおよび急性GVHDにおける血中濃度を経時的に測定した結果、DIHSの急性期に著明に上昇することをみいだし、さらに皮疹部の真皮樹状細胞がTARCを過剰発現していることも明らかとなった。一方、GVHD およびDIHS以外の薬疹では、TARCの上昇は軽度であった。さらに、臨床的にDIHSを疑った患者をHHV-6再活性化群と非再活性化群に分けて比較すると、HHV-6再活性化群において血清TARC値が有意に高値を示した。以上の結果から、血清TARC値の上昇、あるいはそれに続く免疫変調が、HHV-6再活性化に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
DIHSやGVHDにおいては急性期に末梢血中のTregが増加することが報告されており、Tregの増加とHHV-6の再活性化との関わりが疑われている。初年度の研究で皮疹部においてはGVHDとDIHSでTregの動きが異なることが明らかとなった。今回、DIHSの急性期に血清TARC値が著明に上昇することと、皮疹部の真皮樹状細胞がTARCを強発現していることをみいだした。さらにHHV-6の再活性化を伴ったDIHSと、HHV-6の再活性化を伴わなかったDIHS類似症例の間で、血清TARC値に大きな差がみられることも明らかとなった。以上の知見は、皮疹部におけるTARCの過剰発現、さらにTARCによって引き起こされるTregの浸潤が、HHV-6の再活性化に何らかの役割を担っている可能性を示唆しており、DIHSにおけるHHV-6再活性化のメカニズムを解明する上で重要な手がかりになると考えられる。
今回われわれは、DIHSの初期に皮疹部の樹状細胞がTARCを過剰に発現していることをみいだしたが、次年度はTARCの過剰発現がHHV-6の再活性化にどのように関わっているのかについて、リンパ球および樹状細胞を用いたin vitroにおけるHHV-6感染実験を行い、HHV-6再活性化のメカニズムの解明を進める。
HHV-6感染樹状細胞とT細胞の混合培養系を用いて、TARCがウイルスの感染・増殖におよぼす影響を調べる。細胞培養用試薬、抗体、遺伝子解析用試薬を購入する予定である。
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