研究概要 |
薬剤性過敏症症候群(DIHS)は重症薬疹の1つであるが、その病態形成にHHV-6などのヒトヘルペスウイルスの再活性化が、重要な役割を担っているものと考えられている。しかし、DIHSにおけるHHV-6の再活性化機序ついては今なお不明な点が多い。 われわれは、急性GVHDとDIHSとが極めて類似した病態であることに着目し、急性GVHDの病態研究を手掛かりとして、DIHSの病態解明を目指している。初年度の研究で、末梢血中の制御性T細胞(Treg)の動きがDIHSおよび急性GVHDの両者で類似しているものの、皮疹部においては浸潤リンパ球に占めるTreg の割合がGVHDでは持続的に低値を示したのに対し、DIHS では皮疹出現からHHV-6再活性化に至るまでの期間に著しく増加することを見出した(Clin Exp Dermatol 39:284-91, 2014)。そこでTregの遊走や活性化に関わるケモカインの1つであるTARCについて、血中濃度を経時的に測定した結果、DIHS急性期において特異的に、著しく上昇することをみいだし、さらに皮疹部の真皮樹状細胞がTARCを過剰発現していることも明らかとなった(J Dermatol Sci 69:38-43,2013)。このTARCの上昇については、HHV-6再活性化を伴わないDIHS類似の薬疹と比べて、HHV-6再活性化を伴う真のDIHSにおいて有意に高値を示した(Br J Dermatol,in press,doi:10,1111/bjd. 12948)。以上の結果から、血清TARC値の上昇、あるいはそれに続く免疫変調が、HHV-6再活性化に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。
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