研究課題/領域番号 |
23591651
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
金澤 伸雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90343227)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 自己炎症疾患 / 中條ー西村症候群 / PSMB8 / プロテアソーム |
研究概要 |
本研究は、稀少な遺伝性自己炎症疾患の解析によって明らかになった、遺伝子変異に基づくプライマリな炎症制御シグナル異常の関与について、様々な難治性慢性炎症疾患において検知するシステムを構築し、各疾患・症例ごとに検討することによって、各疾患の病態解明やテーラーメード治療の開発への応用を目指す。初年度にあたる平成23年度は、和歌山・泉南地域に患者が集中する中條―西村症候群について、当初蛋白質アレイによる異常シグナル経路の検出を目指したが、当疾患がPSMB8のG201V変異によるプロテアソーム機能不全とそれに伴うユビキチン蓄積が原因であることが明らかとなり、むしろ末梢血単核球や皮疹の生検組織におけるユビキチン蓄積の検出を第一目標に、さらに末梢血単核球の細胞内FACSによるIL-1β、TNFα、IL-6の過剰産生の検討、サイトスピン標本の染色によるNF-κB p65、リン酸化ERK、JNK、p38 MAPKの核への移行・蓄積の有無について検討した。その結果、FACSでは患者末梢血単核球と健常者末梢血単核球の表現型に明らかな差を認めなかったものの、サイトスピン標本の染色により、患者末梢血単核球と全身アトピー性皮膚炎患者末梢血単核球にて多量のK48ユビキチンのリソソームへの蓄積を認めたのに対し、健常者末梢血単核球におけるユビキチンの蓄積は軽微であった。また、PSMB8のT75M変異が見出されたCANDLE症候群において、末梢血単核球においてIFNγ刺激後のSTAT1リン酸化が過剰となることが病態と関連すると報告されたが、中條―西村症候群患者では健常者に比べむしろ低値であり、変異の違いによって異常シグナルが異なる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者の大半が和歌山でフォローされている遺伝性自己炎症疾患である中條―西村症候群をモデルとして、遺伝子異常と密接にリンクし患者検体にて容易に検出できる細胞異常を見出すことができ、今後アトピー性皮膚炎をはじめ様々な炎症性疾患での検討が可能となった。一方、当初目指していた、異常シグナル経路の網羅的な検出を目的とした蛋白質アレイの作成については、検討対象とするシグナル分子の内容とモデル疾患につて再度検討中である。
|
今後の研究の推進方策 |
1.末梢血単核球・皮疹におけるユビキチンのリソソームへの蓄積について、健常者のみならず膠原病や尋常性乾癬などの各種慢性炎症疾患患者にも認められないのか検討し、疾患や病期特異性の有無を確認する(新たな検体採取や解析における患者への負担や個人情報管理については、当大学の所定の倫理委員会の承認を得る)。2.既知の代表的な遺伝性自己炎症疾患特異的なシグナルとして、クリオピリン関連周期熱症候群患者の末梢血単核球・皮疹生検組織におけるASC・活性化カスパーゼ1の検出によるインフラマソーム形成をFACSやサイトスピン標本の染色で確認し、同様の変化が膠原病や尋常性乾癬などのほか成人Still病やBehcet病、Sweet症候群、慢性蕁麻疹をはじめとする各種慢性炎症疾患患者にも認められるか検討する。3.もう一度中條-西村症候群をモデルに、インフラマソーム活性化を検出できる市販の炎症シグナル蛋白質アレイを用いてシグナル異常の検出を試みる。インフラマソーム活性化以外にも、疾患発現に直結する新たな異常シグナル経路が判明すれば、順次解析対象に加える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
・消耗品 1)各種抗体 300,000円 2)遺伝子解析関連試薬・器具300,000円 3)染色関連試薬・器具 300,000円・学会関連費 1)学会参加費 100,000円 2)国内・海外学会参加旅費 200,000円 3)年会費(間接費)・成果報告に関わる費用 1)論文校正費、投稿料、別刷代 100,000円 合計 1、300,000円
|