研究課題/領域番号 |
23591653
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
天羽 康之 北里大学, 医学部, 講師 (10306540)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 国際情報交流 / アメリカ合衆国 / 再生医療 / 幹細胞 / 皮膚 / 毛包 |
研究概要 |
我々は世界に先駆けて、皮膚毛包から分離した毛包幹細胞が神経細胞・グリア細胞・角化細胞等に分化することを明らかにした。我々が開発した毛包幹細胞による再生医療は倫理面や拒絶反応の問題がなく、他部位の成体組織幹細胞と比較して、患者への採取リスクが低いことから、早期の臨床応用が期待されるため早急の研究開発が重要と考えられる。 我々は、神経系幹細胞の重要なマーカーとなるclass VI中間径フィラメントnestin遺伝子のプロモーターを用いたGFP遺伝子導入トランスジェニックマウスを作成し、皮膚毛包幹細胞にnestinが強発現していることを見い出すと共に、皮膚毛包から摘出した毛包幹細胞が神経細胞・グリア細胞・角化細胞等に分化することを明らかにした。また、毛包幹細胞をマウスの切断坐骨神経及び脛骨神経間へ移植した場合、末梢有髄神経の再生を確認した。 さらに脊髄損傷部への毛包幹細胞移植により、運動機能を改善することも確認した 。これらの結果、多分化能を有する毛包幹細胞の末梢、中枢神経再生医療への応用の可能性が示唆された。さらに最近我々は、ヒトにおいてもマウス同様に毛包幹細胞が多分化能を有することを、インフォームドコンセントに基づいて得られたヒト頭部皮膚を用いた検討で明らかにした。現在我々は、毛包幹細胞による挫滅損傷した末梢神経や皮膚付属器、筋肉組織の再生能を解明するため、毛包より効率よく毛包幹細胞を分離する手技を確立し、挫滅損傷した末梢神経や皮膚付属器、筋肉組織に移植し、再生実験を行っており、すでに末梢神経での高い再生能を確認している。現在も引き続き本研究で開発した高効率の毛包幹細胞の分離法を用いて、ES細胞やiPS細胞による臨床応用の最も重大な腫瘍化の危険性という問題点を克服した毛包幹細胞を組み込んだ培養皮膚を作製し、新しい幹細胞医療を確立するための研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在我々は、毛包幹細胞による挫滅損傷した末梢神経や皮膚付属器、筋肉組織の再生能を解明するため、毛包より効率よく毛包幹細胞を分離する手技を確立することに成功した。毛包幹細胞から分裂したばかりの未熟な細胞を効率よく大量培養する手法である。本手法で分離した毛包幹細胞を挫滅損傷した末梢神経や皮膚付属器、筋肉組織に移植し、再生実験を行っており、すでに末梢神経での高い再生能を確認している。現在、培養皮膚への毛包幹細胞組み込みの検討を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究で開発した高効率の毛包幹細胞の分離法を用いて、ES細胞やiPS細胞による臨床応用の最も重大な腫瘍化の危険性という問題点を克服した新しい幹細胞医療を確立するための研究を進めている。現在、最も有用性の高いと考えられる再生医療法の臨床応用の確立に向けた検討を優先して行っている。すでに末梢神経の再生能が非常に有効性が高いことを確認しているため、臨床応用対象として、植皮皮膚や培養皮膚に組み込んだ感覚能にすぐれた皮膚移植方法の確立を進めている。効率よく毛包幹細胞を組み込む手技の確立と安全性の確認を引き続き行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度も本研究で開発した高効率の毛包幹細胞の分離法を用いて、ES細胞やiPS細胞による臨床応用の最も重大な腫瘍化の危険性という問題点を克服した新しい幹細胞医療を確立するため、植皮皮膚や培養皮膚に組み込んだ感覚能にすぐれた皮膚移植方法の確立に向けて研究を進める予定である。特に効率よく毛包幹細胞を組み込む手技の確立と安全性の確認を引き続き行う予定である。
|