抗菌物質の中で、ヒトβ-デフェンシン、LL-37、catestatinなどが注目され、様々な皮膚疾患の病態に関与することが知られている。我々は、上記の抗菌物質が抗菌作用のみならず、幅広い免疫調節機能を持つことを見出した。 平成23年度は、catestatinがケラチノサイトのサイトカインやケモカイン産生、遊走作用と増殖、さらに、創傷治癒を促進することを報告した。平成24年度は、IL-36がcatestatinではなく、ソラヤシンとLL-37の遺伝子発現やタンパク産生量を促進することを明らかにした。また、また、LL-37がケラチノサイトを活性化し、炎症を調節することを報告した。平成25年度は、catestatinの好中球の活性化に対する効果を調べたが、効果を見られなかった。また、新規の抗菌ペプチドであるIDR-HH2、 IDR-1002、 IDR-1018の好中球に対する作用を調べた。その結果、これらの抗菌ペプチドが好中球の接着及び活性化マーカーの発現を誘導し、さらに、好中球の血管内皮細胞への接着を著名に増強した。また、これらのペプチドが好中球の遊走能、抗菌物質の産生と殺菌作用を促進した。興味深いことに、上記のペプチドがリポポリサカライドによる好中球の脱顆粒、活性酸素種と炎症性サイトカインの産生を抑制することが明らかになった。 以上より、宿主防御ペプチドである抗菌ペプチドが好中球の活性化を調節することによって、抗菌作用だけでなく、炎症反応、生体防御や免疫調節に関与しているという特色と独創的な点であり、この分野の研究に新たな指標を与えると考えられた。
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