研究課題/領域番号 |
23591659
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
伊藤 祥輔 藤田保健衛生大学, その他部局等, 名誉教授 (70121431)
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研究分担者 |
若松 一雅 藤田保健衛生大学, 医療衛生学部, 教授 (80131259)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | メラニン / 紫外線 / ユーメラニン / フェオメラニン / UVA / UVB |
研究概要 |
メラニンには黒色のユーメラニンと赤褐色のフェオメラニンがあり、前者は紫外線防御に働くが、後者は光発がんをもたらすと言われている。メラニンは表皮メラノソームにおいて産生され、ケラチノサイトに転送されるが、その後の紫外線によるメラニンの生体内での分解についてはほとんど不明である。本研究は両型のメラニンの紫外線(UVA, UVB)による生理的分解過程の解明を目的とする。分解反応の追跡には、我々の開発したメラニンの分解的定量法を活用する。平成24年度は、ヒト黒色毛と赤毛を用いて先端から毛根部にかけてメラニンを分析することにより、日光紫外線によりユーメラニンでは遊離のPTCA(ピロール-2,3,5-トリカルボン酸)が分解のマーカーとなりうること、フェオメラニンではベンゾチアジン体からベンゾチアゾール体に変化することを見出した。つぎに、マウス体毛およびヒト毛髪にUVAを照射して、同様な分解反応が起ることを示した。さらに、可溶合成ユーメラニンおよびフェオメラニンとしてDHICA-メラニンおよびDopa+Cys-メラニンを用いてUVAにより同様な分解反応が起こり、ユーメラニンではまず光酸化により暗化(即時型黒化に相当)し、ついで光分解(脱色)することを示した。フェオメラニンでもベンゾチアゾール体への変化に伴って、光分解(脱色)が起った。これらの変化は、ユーメラニンではポリマー鎖の短縮、フェオメラニンでは伸張を伴うことをゲルろ過HPLCを用いて証明した。これらの変化はUVBでは進行が遅く、主にUVAが関与していることが分かった。UVAによるメラニンの暗化はその後の分解を伴うことから、これらの結果はUVAには紫外線防御作用がない可能性を示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヒト毛髪を用いて日光紫外線によるメラニンの分解を示したのは、当初の実験計画に無かったが重要な実権結果である。マウス体毛およびヒト毛髪を用いる実験も当初の計画より早く進行した。一方、当初の予定にあった培養ヒトメラノサイトについての予備実験には着手していない。全体として、24年度分の研究成果を纏めてPigment Cell Melanoma Res誌に投稿することができたので、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた培養表皮メラノサイトに紫外線を照射する実験は、共同研究者であるBeiersdorf社Kolbe博士の研究室において実施することとなった。その実験結果を踏まえ、培養虹彩・脈絡膜メラノサイトを共同研究者New York医科大学Hu教授から恵与を受ける。一方、当初の予定には無かったが、本研究における合成可溶メラニンの有用性が明らかとなったので、これを用いて紫外線(UVA, UVB)照射による分解過程をより詳細に解析する。三次元ヒト皮膚モデルを用いる実験は平成25年度実施を予定しているが、その予備実験を24年度に実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
メラニン分析のためHPLCカラム、試薬および器具を購入する。機器の修理にも使用する。さらに、培養試薬および三次元ヒト皮膚モデルを購入する。
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