研究概要 |
メラニンには黒色のユーメラニンと赤褐色のフェオメラニンがあり、前者は紫外線防御に働くが、後者は光発がんをもたらすと言われている。メラニンは表皮メラノソームにおいて産生され、ケラチノサイトに転送されるが、その後の紫外線による生体内での分解についてはほとんど不明である。本研究は両型のメラニンの紫外線(UVA, UVB)による生理的分解過程の解明を目的とする。分解過程の追跡には、我々の開発したメラニンの分解的定量法を活用する。平成24年度は、合成および天然(ヒト毛髪)を用いて、UVA照射によりユーメラニンでは分解により遊離PTCA(ピロール-2,3,5-トリカルボン酸)が生成してポリマー鎖の短縮が起り、フェオメラニンではベンゾチアジン体からベンゾチアゾール体への変化とともにポリマー鎖の伸長が起ることを明らかにした(Pigment Cell Melanoma Res, 2012)。 平成25年度は、これらの成果を踏まえて、合成および天然メラニンについて、UVAおよび可視光による光分解過程を解析した。その結果、PTeCA(ピロール-2,3,4,5-テトラカルボン酸)がユーメラニンの架橋度を占める特異的なマーカーとなることが分かり、これを用いて培養ヒトメラノサイト、単離ウシ網膜色素上皮メラニン、ヒト網膜色素上皮細胞において、ユーメラニンがUVAあるいは可視光により架橋構造を形成することを示した(Pigment Cell Melanoma Res, 2013)。これらの結果は、光によるユーメラニンの分解過程が、分解のみならず架橋形成を伴う複雑なものであることを示し、網膜色素上皮細胞におけるユーメラニンによる活性酸素の分解や鉄イオンの捕捉という機能が可視光により低下することを示唆している。このように、加齢黄斑変性の病因に関連して興味深い結果を得ることができた。
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