魚鱗癬は、症状が皮膚に限局し他臓器の病変を伴わない非症候群性魚鱗癬と、合併症状に応じて、毛髪異常あるいは神経学的症状を伴う魚鱗癬、致死的な経過、あるいは、それ以外の臓器の異常を伴う症候群性魚鱗癬に分類されている。非症候群性魚鱗癬では、表皮融解性魚鱗癬、魚鱗癬様紅皮症、および、葉状魚鱗癬とその亜型の一部においても、魚鱗癬症状とともに紅皮症あるいは紅斑を伴うことがある。また、症候性魚鱗癬のなかには、ネザートン症候群のように、アトピー性皮膚炎様の激しいそう痒性皮膚炎を合併する病型も存在する。一方、アトピー性皮膚炎では、尋常性魚鱗癬の責任遺伝子であるプロフィラグリン遺伝子に欠失変異が検出される症例も多い。本年度は、ネザートン症候群の稀な2症例を対象として病態解析を行った。SPINK5遺伝子の解析からp.Y126X 、p.R790Xの欠失変異以外に、新規変異p.C367Lfs*3を同定した。表皮のサイトカインの解析では、アトピー性皮膚炎では表皮にIL-33の高発現がみられることに注目し、ネザートン症候群表皮におけるIL-33の発現を免疫組織学的に検討した。その結果、これら変異をもつネザートン症候群では、IL-33が表皮で高発現することが示唆された。IL-33を表皮特異的に発現する遺伝子改変マウスの表現型がアトピー性皮膚炎に酷似する免疫学的特性を示すことを考慮すると、ネザートン症候群における紅皮症の原因として、表皮から産生されるIL-33がその病態に関与する可能性が示唆された。
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