研究課題/領域番号 |
23591663
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
東 隆一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 助教 (00531112)
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研究分担者 |
清澤 智晴 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 准教授 (90221217)
守本 祐司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科, 准教授 (10449069)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | インドシアニングリーン / 金ナノロッド / 近赤外レーザー / 血管腫 |
研究概要 |
血管腫や皮膚悪性腫瘍に選択的に集積する光応答性物質とそれを励起するのに適したレーザー照射を組み合わせ、腫瘍のみを破壊し、周囲組織の損傷を最小限に抑えられる理想的な治療法の確立が期待されている。インドシアニングリーン(ICG)や申請者らが開発を進めてきた金ナノロッド(GNR)は波長800nm前後の近赤外光を効率よく吸収し、治療に利用可能な、光吸収による熱産生が期待できる。また、ICGやGNRはそのサイズや物理的性質より、血管腫や皮膚悪性腫瘍に効率よく集積させられる可能性が高い。そこで本研究では、ICG-GNR複合体を構築し、近赤外光を利用した光診断および治療技術を確立することを目的とした。H23年度は、ICGとGNRそれぞれについて、レーザー照射により組織破壊に十分な熱を発生するか検証を行った。実験1 GNRと近赤外レーザー照射による血管腫治療に関する実験血管腫動物モデルとしてニワトリのトサカを使用した。波長800nmに吸収域のピークを持ったGNRを局所または静脈内投与し、波長800nmのダイオードレーザーを照射し、組織学的評価を行った。結果、直径50µm以下の小血管の閉塞は確認できた。しかし、より径の太い血管には障害は与えられず、周囲の組織損傷も避けられなかった。実験2 ICGと近赤外レーザー照射による血管病変治療に関する実験ラットの腹壁皮下血管をターゲットとして、ICGを血管内投与し、ダイオードレーザー(波長800nm)を照射した。結果、周囲組織の損傷なく照射部血管を閉塞させられることが確認された。以上より、ICG、GNRのいずれも目的組織を破壊するのに十分な熱エネルギーを発生しうることが分かり、今後ICG-GNRを用いた皮膚病変の治療法を確立するための基礎となった。治療効果や、対象組織の選択性はレーザーの出力やパルス特性に大きく依存することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験から、ICGと金ナノロッド(GNR)は実用可能な範囲の用量で、レーザー照射により組織破壊をもたらせることがわかった。しかし周囲組織に損傷を与えず腫瘍組織のみを効率よく破壊するためには、出力やパルス幅の点でより多彩な条件での照射を検証する必要がある。23年度用いたレーザーがやや低出力であったため、至適な照射条件を詰めるには至らなかった。当初計画では23,24年度でICG-GNRの血中滞留性や組織への集積性を検証する予定であったが、これは24年度の課題として持ち越した。以上より、現在までの達成度を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
1 悪性腫瘍に対する金ナノロッド(GNR)を利用したレーザー治療の検討当初の目標のひとつは、EPR効果(ナノサイズの粒子が血管やリンパ管の未熟な悪性腫瘍に集積しやすい性質がある)を利用し、ICG-GNRを悪性腫瘍に集積させ、レーザー光を照射し、選択的に腫瘍細胞を破壊することである。23年度に検証した結果、金ナノロッドは用量やレーザー照射条件を最適化することにより、選択的かつ効率的な抗腫瘍効果を発揮することが予想された。また、それ単体でEPR効果が期待できるサイズであるため、24年度はICG-GNRに代えて金ナノロッドの腫瘍組織への集積性の検証、レーザー照射条件の検討を皮膚悪性腫瘍の動物モデルを用いて行う。2 良性血管性病変に対するICGを用いたレーザー治療の検討23年度に行った単純性血管腫モデル(ニワトリのトサカ)では一定の効果を見いだすことはできたが、この手法では現在臨床で広く行われているパルス色素レーザーやロングパルスNd-YAGレーザーの単純照射に比して優位性が見いだしにくいので、より難治性の静脈瘤や動静脈奇形を実験対象として検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究に必要なレーザー装置本体はすでに確保してあるが、照射に必要なファイバー類の購入が必要である。他に主に実験を行うのに必要な試薬、消耗品、実験動物の購入に充てる。また、研究に関する情報収集や成果発表のための学会参加費、外国語論文の校閲や論文投稿量への支弁も予定している。
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