研究課題/領域番号 |
23591666
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
松田 明生 独立行政法人国立成育医療研究センター, 免疫アレルギー研究部, 研究員 (10359705)
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研究分担者 |
二村 恭子 独立行政法人国立成育医療研究センター, 免疫アレルギー研究部, 共同研究員 (60596956)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | IL-33 / 皮膚組織細胞 |
研究概要 |
IL-33は、上皮細胞や血管内皮細胞等、バリア組織細胞中の核内に恒常的に発現する核内因子として同定されたが、その生理作用については不明であった。最近になり、IL-33は様々な血球系細胞に作用してTh2免疫応答を強力に惹起すること、IL-33やその受容体ST2の遺伝子多型が様々なアレルギー疾患発症と関連すること、さらに皮膚においてもIL-33は尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎の病変部で増加していることが報告されているが、IL-33の皮膚組織細胞に対する作用については不明である。 本年度は、皮膚組織細胞(表皮角化細胞、皮膚線維芽細胞、皮膚微小血管内皮細胞)をIL-33で刺激した際、発現変動する遺伝子についてGeneChipを用いてスクリーニングした。その結果、以下の点が明らかとなった。(1)皮膚線維芽細胞にはST2が発現していないためIL-33の作用は認められなかった。(2)表皮角化細胞をIL-33で刺激すると、IL-8、GRO等の好中球遊走性ケモカイン群の発現誘導が認められた。(3)皮膚微小血管内皮細胞をIL-33で刺激すると、上記ケモカイン群に加えてIL-6等炎症性サイトカインの誘導・分泌を確認した。(4)IL-33による表皮角化細胞のIL-8産生は、ステロイド薬の添加により顕著に抑制された一方、皮膚微小血管内皮細胞からのIL-8、IL-6産生に対して抑制効果は部分的であった。 以上の結果から、IL-33は皮膚組織細胞の中でも、特に表皮角化細胞および皮膚微小血管内皮細胞に作用することが初めて明らかとなった。皮膚組織におけるIL-33の作用は、主として好中球性炎症に関与している可能性が示唆されたが、特に皮膚微小血管内皮細胞におけるIL-33作用に対して、ステロイド薬の抑制効果が限定的であることから、IL-33/ST2は炎症性皮膚疾患における新たな治療標的をなる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL-33は特にバリア組織に恒常的に発現するアレルギー関連遺伝子であることから、皮膚組織におけるその作用標的細胞を同定することは、喫緊の課題であった。本年度の研究成果によりIL-33は表皮角化細胞および皮膚微小血管内皮細胞に作用して主に好中球性炎症に関与するサイトカイン・ケモカインを強力に誘導することが明らかとなった。従って、当初の研究目的と照らし合わせても、概ね目標を達成していると思われる。一方、当初の研究計画に記載していた、IL-33応答により機能する分子の機能解析までは至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
IL-33がマスト細胞や自然リンパ球などの血球系細胞に作用した場合、IL-13等Th2サイトカイン産生を強力に誘導することが知られているが、皮膚組織ではTh2関連因子よりも、むしろ好中球関連因子の発現を顕著に誘導した。この点に関する考察として、創傷などにより皮膚バリアが破壊された場合、皮膚組織中に恒常的に発現しているIL-33が皮膚組織の破壊に伴い放出され、近傍のインタクトな皮膚組織細胞に作用して好中球遊走因子を大量に放出させる可能性が推察される。傷口からの病原体侵入を防ぐため創傷部位に好中球を動員させることは、生体防御の初期応答としても理にかなっている一方、アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患病態との関連については未だに不明である。今後はこの点にも着目して、アレルギー性炎症がIL-33応答をどのように修飾する可能性があるのかについて、研究を推進していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
日常的な実験で消耗する試薬類(細胞培養用培地、核酸抽出キットなど)や機能解析のための抗体、試薬キット、さらには学会での研究成果発表のための旅費、英文校正費の諸費用に研究費を使わせていただく予定である。
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