研究課題
IL-33は、上皮細胞や血管内皮細胞等、バリア組織細胞中の核内に恒常的に発現する核内因子として同定されたが、その生理作用については不明であった。最近になり、皮膚においてもIL-33は尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎の病変部で増加していることが報告されているが、IL-33の皮膚組織細胞に対する作用については不明である。本研究課題の前年度までの成果により、①IL-33は皮膚組織細胞の特に表皮角化細胞および皮膚微小血管内皮細胞に作用して、好中球性炎症に関与している可能性、さらに②皮膚表面の掻破刺激モデルとして、表皮角化細胞の細胞破砕液でintactな表皮角化細胞および皮膚微小血管内皮細胞を刺激したところ、表皮角化細胞に対しては全く影響を与えなかったが、皮膚微小血管内皮細胞に対しては、IL-33刺激の場合と同様、刺激後3~6時間をピークとするIL-8およびIL-6の顕著なmRNA発現誘導が確認された。以上の結果は、掻破刺激が皮膚血管に炎症性分子の誘導を引き起こし、炎症悪化に繋がる機構の存在を示唆するものである。最終年度ではさらに、表皮角化細胞破砕液を皮膚線維芽細胞に作用させると、アレルギー疾患発症の鍵となるサイトカインIL-33、TSLP、さらには好酸球の遊走に関与するMCP-3などのケモカインmRNAが顕著に誘導されることを明らかにした。TSLP、MCP-3については蛋白産生も確認した。これらの結果は、かゆみのため皮膚組織を掻破すると、傷害された表皮角化細胞から放出される何らかの物質により、炎症性皮膚疾患の病態悪化を誘導する機構の存在を示すものであり、いわゆる“かゆみと掻破の悪循環”(itch-scratchサイクル)に関して、分子メカニズムの一端を示唆するものである。しかし、この掻破刺激モデルにおいて、表皮角化細胞に発現するIL-33が原因物質としてどの程度関与しているのか、あるいは破砕液中に含まれる炎症悪化の誘導に決定的な物質の同定には至らなかった。
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