研究課題/領域番号 |
23591667
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中川 伸 北海道大学, 大学病院, 講師 (60360905)
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研究分担者 |
井上 猛 北海道大学, 大学病院, 講師 (70250438)
朴 秀賢 北海道大学, 大学病院, 助教 (60455665)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 抗うつ薬 / 神経幹細胞 / 海馬 / ドパミン / CaMKIV / うつ病 / 気分障害 / 神経細胞新生 |
研究概要 |
抗うつ薬の作用機序として海馬における神経細胞の増加が重要であると考えられてきている。今年度、神経細胞を増加させるカスケードとして1)ドパミン(DA)の直接効果、2)カルモジュリンキナーゼIV(CaMKIV)を介する間接効果を検討した。1)DAの直接効果:DA受容体刺激薬が、臨床的に一部のうつ病患者に有効であるという所見が報告されており、DAの成体ラット海馬歯状回由来神経幹・前駆細胞 (ADPs) に対する効果を検討した。その結果(1)DAによりADPsの増殖が促進されること、(2)増殖作用はD1-like 受容体を介して起こること、(3)レチノイン酸誘導のADPsの分化に対して細胞運命決定がニューロンにシフトことを明らかにした。2)CaMKIVを介する間接効果:シナプス間隙においてセロトニン、ノルアドレナリンを増加させる従来の抗うつ薬の慢性投与は各受容体を介して、海馬顆粒細胞内のcAMP―CREBカスケード活性化し、その下流に想定されているFGF-2, BDNFなどの神経栄養因子が神経細胞を増加させると考えられている。神経系において細胞内カルシウム濃度の上昇は、カルシウム/カルモジュリンが結合し、Ser/Thr部位のリン酸化によりその活動性が変化するCaMKにより、多くの細胞内反応が引き起こされる。中でもCREBを直接リン酸化するCaMKIVは注目される物質である。本年度私たちはCaMKIVノックアウトマウスを使用し、CaMKIVの抗うつ作用における役割を検討した。その結果(1)慢性の抗うつ薬投与により、CaMKIVのリン酸化が増加する、(2)CaMKIVノックアウトマウスに抗うつ薬を慢性投与してもCREBのリン酸化は減少し、神経細胞は増殖しない、(3)しかし、神経細胞の生存は保たれ、行動学的にも抗うつ作用を示すことを明らかとした。これらの知識は新規抗うつ薬を創薬するさいの一助になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は細胞外神経伝達物資ならびに細胞内シグナルにおいて、それぞれドパミンとCaMKIVという物質に着目した。神経前駆細胞を使った培養系とノックアウトマウスを用いたin vivo系を目的に応じて活用できた。現在、論文を作成中、または投稿している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は特にCaMKIVと神経細胞新生、抗うつ効果についてさらに探求する。そのためCaMKIVノックアウトマウスの由来である野生型C57BLマウスによるうつ病モデル(chronic mild stressモデル)、抑うつ評価(sucrose preference test, forced swimming test, tail suspension test)を確立する。さらには、いくつかの作用機序の異なる抗うつ薬や電気けいれん療法においてCaMKIVが関与するのかを検討する。
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