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2011 年度 実施状況報告書

中性アミノ酸のキラル特性に着目した統合失調症の病態解明

研究課題

研究課題/領域番号 23591668
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

山本 直樹  東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (70312296)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードグルタミン酸 / D-セリン / 統合失調症
研究概要

本研究では中性アミノ酸のキラル特性に着目し、とくにD-セリンの脳内代謝調節にかかわる分子機構の解析およびその臨床応用を図ることによって難治性統合失調症の分子病態に基づいた新規治療法の開発を促進することを研究全体の最終到達目標としている。大脳皮質においてD-セリンに対してキラル選択的に発現応答性を示す遺伝子を同定し、それらの遺伝子産物を標的とする統合失調症治療候補薬のスクリーニング法を確立する。大脳新皮質においてD-セリンに対してキラル選択的に発現応答性を示す遺伝子に関して、統合失調症の分子病態モデルにおける役割を解析し、これらの遺伝子産物を標的とする統合失調症治療候補薬のスクリーニング法の開発を試み、今年度は下記の成果を得た。 D-セリン応答遺伝子dsr-3の脳内発現を詳細に検討した。ラットにおいて生後8日齢の大脳新皮質に転写レベルで高い基礎発現を認め、前脳部優位の発現パターンを示すことが明らかとなった。成長とともに成熟ラット脳ではdsr-3の発現は減少するが、やはり前脳部優位の発現パターンは保たれる。肝臓などの末梢組織での発現ははるかに低いことから、遺伝子産物が前脳部優位の高次神経機能にかかわる可能性が示唆される。現在、ヒトD-セリン応答遺伝子およびそれに関与するNMDA受容体機能修飾因子の統合失調症との疾患遺伝子関連解析を開始しており、統計学的解析をすすめつつある。難治性統合失調症の少なくとも一部においてNMDA受容体機能低下が推定されているが、D-セリンはこのNMDA受容体に対し内在性アロステリック・アゴニストとして作用する。ラットの行動異常(移所運動量亢進、常同行動等)に対して脳室内D-セリン投与により改善効果が得られることや臨床試験の結果などから、D-セリンによるNMDA受容体作用の増強によって統合失調症の既存抗精神病薬に抵抗性の症状を改善することが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

大脳皮質においてD-セリンに対してキラル選択的に発現応答性を示す遺伝子を同定し、その脳内発現について解析を行なってその発現分布を明らかにした。また応答遺伝子等のヒト統合失調症における関連解析も進捗しつつある。

今後の研究の推進方策

動物モデルにおけるD-セリン応答遺伝子の発現機能解析をすすめる。また、ヒトD-セリン応答遺伝子およびそれに関与するNMDA受容体機能修飾因子の統合失調症との疾患遺伝子関連解析を推進し、多検体での解析のみならず、発症年齢などのちがいに着目した統計学的解析をすすめていく。

次年度の研究費の使用計画

1. D-セリン応答遺伝子dsr-3その他の遺伝子産物の発現および機能解析2. 統合失調症の薬理学的動物モデルにおける応答遺伝子にかかわる病態機能解析これらは、前年度と同様におもにラットをもちいた解析(神経生化学的および行動薬理学的解析)を継続する。 3. ヒトD-セリン応答遺伝子およびそれに関与するNMDA受容体機能修飾因子の統合失調症における関連解析各候補遺伝子の領域に存在する一塩基多型(SNPs)について主としてTaqman法を用いて解析をすすめる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] D-サイクロセリンの臨床エビデンス.2012

    • 著者名/発表者名
      瀧口一夫, 山本直樹, 西川徹
    • 雑誌名

      臨床精神薬理

      巻: 15 ページ: 687-695

  • [雑誌論文] Further evidence for a male-selective genetic association of synapse-associated protein 97 (SAP97) gene with schizophrenia.2012

    • 著者名/発表者名
      Uezato A, Kimura-Sato J, Yamamoto N, Iijima Y, Kunugi H, Nishikawa T
    • 雑誌名

      Behav Brain Funct

      巻: 8 ページ: 2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Improvement of asymmetrical temporal blood flow in refractory oral somatic delusion after successful electroconvulsive therapy.2012

    • 著者名/発表者名
      Uezato A, Yamamoto N, Kurumaji A, Toriihara A, Umezaki Y, Toyofuku A, Nishikawa T
    • 雑誌名

      J ECT

      巻: 28 ページ: 50-51

    • 査読あり
  • [雑誌論文] グルタミン酸仮説に基づく新たな統合失調症治療薬.2011

    • 著者名/発表者名
      山本直樹, 西川徹
    • 雑誌名

      精神科治療学

      巻: 26 ページ: 1501-1506

  • [学会発表] ラット大脳新皮質におけるphencyclidine投与後遺伝子発現パターンの発達による変化のメカニズムの検討.2012

    • 著者名/発表者名
      海野真一, 海野麻未, 荒木誠, 山本直樹, 西川徹
    • 学会等名
      第7回 日本統合失調症学会
    • 発表場所
      愛知県名古屋市
    • 年月日
      2012年3月16日
  • [学会発表] Genetic association study of synapse-associated protein 97 (SAP97) and schizophrenia.2011

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto N, Sato-Kimura J, Shimazu D, Uezato A, Jitoku D, Umino M, Umino A, Kurumaji A, Iijima Y, Kunugi H, Iwayama Y, Yoshikawa T, Nishikawa T.
    • 学会等名
      第54回 日本神経化学会大会
    • 発表場所
      石川県加賀市
    • 年月日
      2011年9月27日
  • [学会発表] Alteration of genomic DNA and gene expression of D-serine modulator PAPST1 in schizophrenia.2011

    • 著者名/発表者名
      Uezato A, Shimazu D, Yamamoto N, Mccullumsmith RE, Meador-Woodruff JH, Nishikawa T.
    • 学会等名
      第32回内藤コンファレンス Biological basis of mental functions and disorders.
    • 発表場所
      山梨県北社市
    • 年月日
      2011年10月20日
  • [学会発表] Genetic association of synapse-associated protein 97 (SAP97) in schizophrenia.2011

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto N, Sato-Kimura J, Uezato A, Jitoku D, Umino M, Umino A, Kurumaji A, Iijima Y, Kunugi H, Nishikawa T.
    • 学会等名
      第32回 内藤コンファレンス Biological basis of mental functions and disorders.
    • 発表場所
      山梨県北社市
    • 年月日
      2011年10月20日
  • [図書] イオンチャンネル, 幻覚[生物学], 脆弱性-ストレスモデル in 現代精神医学事典2011

    • 著者名/発表者名
      山本直樹
    • 総ページ数
      1391
    • 出版者
      弘文堂

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公開日: 2013-07-10  

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