研究課題
本研究では中性アミノ酸のキラル特性をもつD-セリンに着目して、その脳内代謝調節にかかわる分子機構の解析およびその臨床応用により、統合失調症の分子病態に基づいた新規治療法の開発を促進することを到達目標としている。具体的には、大脳皮質においてD-セリン選択的に発現応答性を示す遺伝子およびその関連遺伝子等を同定し、それらの遺伝子産物を標的とする統合失調症治療候補薬のハイスループットスクリーニングが可能となるような前臨床的研究を目指している。今年度の実績として、現在までにヒトD-セリン応答遺伝子およびそれに関与するNMDA受容体機能修飾因子の統合失調症との疾患遺伝子関連解析の大規模サンプルの一塩基多型解析が部分的に終了し、集積したデータについては詳細な統計学的解析をすすめつつある。現在、ケースコントロール研究ともに連鎖不平衡試験も行なっている。難治性統合失調症の少なくとも一部においてNMDA受容体機能低下が推定されているが、D-セリンはこのNMDA受容体に対し内在性アロステリック・アゴニストとして作用することから、統合失調症の病態の解明とともに、D-セリンによるNMDA受容体作用の増強によって統合失調症の既存抗精神病薬に抵抗性の症状を改善することが期待される。
3: やや遅れている
平成25年度中に統合失調症における計画したヒト遺伝子関連解析をすべて終了し国際学会で発表する予定であったが、技術的な問題のためデータ解析の進捗が遅れた。
計画を変更し、一塩基多型解析の精度および速度を高めるために複数の解析システムを用いるように改良した。これにより確実に全ての多型解析ならびに統計的分析を達成することとする。
遺伝子関連解析研究に必要な経費および研究成果発表に必要な経費が次年度に繰り越されたため。計画を変更し、次年度に統合失調症におけるヒト遺伝子関連解析および国際会議での成果発表を行なう。
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PLOS ONE
巻: () ページ: in press
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