本研究では、中性アミノ酸のひとつセリンがNMDA型グルタミン酸受容体(以下NMDA受容体)にキラル選択的に作用することに着目し、その脳内代謝機構やその作用調節を解明するとともに、統合失調症の分子病態に基づいた新規治療法の開発を目指した。NMDA受容体阻害薬(PCP)応答遺伝子やその関連遺伝子を含めたD-セリンシグナルの下流標的遺伝子候補として統合失調症との関連解析の結果、複数の候補遺伝子において統合失調症との遺伝子型およびアリル頻度において関連が認められることを明らかにした。中性アミノ酸のキラル特性に着目した今回の分子遺伝学的研究から統合失調症の疾病脆弱性の異質性を示唆する知見が得られた。
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