研究課題/領域番号 |
23591669
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
金子 尚史 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (40515657)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コピー数多型 / 統合失調症 / 臨床精神分子遺伝学 / 多発罹患大家系 / 連鎖解析 |
研究概要 |
マイクロアレイ解析においてコピー数の変化が見られたCNVのうち、推定上のサイズが500kb以上のCNVと頻度が1%未満のCNVについて解析を行う予定である。当初、2000名以上の健常者を対象とした報告 (Shaikh et al, 2009) において1%未満とされたCNVについて解析を行う予定であったが、その後Shaikhらにより頻度1%未満とされたCNV領域であっても、他の研究でcommon CNVと報告されるCNV領域が多数見られ、またアジア人30名を対象とした解析においてアジア人特異的なcommon CNVが存在することが推定されている (Park et al, 2010)。このため家系内において、マイクロアレイ解析により得られたSNPデータによる詳細マッピングを用いた連鎖解析を行い、連鎖領域もしくは連鎖の可能性のある領域を選択することとした。コピー数の変化の見られたCNVの内、データベース (Database of Genomic Variant, http://projects.tcag.ca/variation/) 上にて健常対照サンプルにおいて頻度1%以上との報告のあるCNVおよび複数の研究において報告のあるCNVを除外したCNV 171ヵ所について、連鎖の可能性のある領域に存在するものを選択して家系サンプルにおけるコピー数の決定および症例‐対照研究を行う予定としている。現在、マイクロアレイのSNPデータを用いて連鎖解析を行っている。またCNVについては特に3アレル以上の多型がある場合には各々の相を特定できず、家系内での伝達様式が特定できない可能性がある。このため、この解析により得られた家系内での連鎖領域のデータを参考にすることにより、CNVの家系内における伝達様式を推定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画時に頻度が1%未満と推定されていたCNVについて、高頻度のCNVであるという報告が見られた。このため、今回の家系で見られたCNVのうち、複数の研究において報告の見られたCNVおよび健常者の頻度が1%以上との報告あるCNVを除外したところ171カ所のCNVが頻度がまれである可能性が高いと思われた。しかし171カ所のCNVすべてについて家系サンプルにおけるCNVコピー数の決定を行うことは費用、労力、家系のDNAサンプルの消耗の点から困難と考えられるため、別途行う予定であったSNPデータを用いたゲノムワイド連鎖解析を行い、終了後にCNVを再選択するよう計画を変更した。このため家系内のコピー数の同定が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイ解析で得られたSNPデータを用いて連鎖解析を遂行する。家系内に存在するCNVのうち、データベース上で頻度1%以上と報告のあるものおよび複数の報告のあるものを除外した171のCNVから、LOD値の高い領域に存在するCNVを選択し、TaqMan法による定量的リアルタイムPCRを行い、各サンプルのコピー数を決定する。得られたコピー数をもとに各CNVにおける連鎖の有無を再度検定し、有意な連鎖もしくは連鎖を示唆する水準に達したCNVをその後の関連解析に用いる。なお家系内から得られる疾患に関連のあるCNVについては、頻度が低く相対危険度が高い可能性が強いため、1次解析として症例、対照200組について上記リアルタイムPCR法により各々のCNV頻度を求め、有意差検定を行うよう計画を変更する。それらのCNVのうち有意差の見られたものおよび対照サンプルにおける頻度が1%未満もしくは5%未満のもののみ追加解析を行い、2500組による関連解析を行う予定である。また、500kb以上のサイズを持つCNVについては、ゲノムワイドの連鎖解析の結果を待たずにTaqMan法によるリアルタイムPCRにより家系内のコピー数を決定し、連鎖の有無について検討する。連鎖の見られたCNVについては、症例、対照200組のサンプルについて関連解析を行う。5kb以上の有力な候補CNVが見られない場合には、1kb以上のCNVについて同様に選択し、解析を行う。家系におけるゲノムワイド連鎖解析により、連鎖もしくは連鎖を示唆する結果が得られなくとも、比較的LOD値の高い領域について探索的にCNVのコピー数の確認を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
家系サンプルにおけるCNVコピー数決定のためのプローブ選択を、SNPデータを用いた連鎖解析終了後に行うよう研究計画を変更したために、平成23年度内にプローブ等の購入を行わず、23年度の予算執行が0円となった。このため23年度に行う予定であった家系サンプルにおけるCNVのコピー数の決定と、その後の症例‐対照サンプルにおけるコピー数の解析を24年度に合わせて行う予定である。推定20カ所前後のCNVにつき家系サンプルを用いてABI社のTaqMan Copy Nunber Assayによりコピー数の同定を行い、内6から8カ所程度のCNVについて計400サンプルによる関連解析を行う予定であるため、そのためのTaqManプローブやその他の試薬を要する。また、症例、対照200組のサンプルにおいて関連が見られるか対照サンプルの頻度の低いCNVについて、5000サンプルによる追加解析を行う予定でありそのための試薬を追加購入する。途中経過報告、情報収集,意見交換のため国内学会出席を予定しており,学会参加のための旅費を要する。
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