研究課題
本研究の目的は,統合失調症治療における重要な問題である,職業的および社会的機能の回復について,抗精神病薬が言語記憶と心の理論の神経回路に及ぼす影響を明らかにすることで,それを修復・再生する新たな治療手段の開発へつなげていこうとするものです。初年度,及び2年目の研究では,成体脳組織から調整した細胞を用いたin vitro解析研究を進め,複数の非定型抗精神病薬が,いずれもNMDA受容体拮抗薬MK-801で誘発される,NG2陽性細胞からGABA interneuronへの分化障害を抑制する効果を有することを突き止めました。なかでも,olanzapineは,GABA interneuronに加え,oligodendrocyteへの分化も同時に促進させるという特徴的な作用を示し,この違いが薬剤の臨床効果発現の差異とどう関わるのかに興味がもたれました。3年目の研究では,それらの薬剤によるGABA interneuron産生促進効果の作用メカニズムとして,heat shock protein (HSP90)の発現増加の関与を明らかとしましたが,同時に検討した定型抗精神病薬のhaloperidolはGABA interneuron産生変化に影響を及ぼさず,また,HSP90発現はむしろ減少させる作用を示したことから,HSP90の発現変化を介した本作用と,非定型抗精神病薬による認知機能障害改善効果との関連が推察されました。さらに,我々はこれまでの検討で,神経幹細胞の経静脈的投与によって,統合失調症モデル動物の社会性認知行動の異常が改善されることを報告をしてきましたが,今回,幹細胞移植にolanzapineを併用処置することで,移植細胞がより高率に脳に移行・生存することを示し,臨床学的にも有用性が高い再生治療の確立の上でも,薬物・細胞併用療法の重要性につながる成果が得られたと考えている。
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