研究課題/領域番号 |
23591688
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
傳田 健三 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (10227548)
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研究分担者 |
井上 猛 北海道大学, 大学病院, 講師 (70250438)
田中 輝明 北海道大学, 大学病院, 助教 (00374447)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 児童・青年期 / 双極性障害 / 疫学研究 |
研究概要 |
北海道の小・中・高校生3,500人に対し、自己記入式うつ症状評価尺度(QIDS-J)、躁症状評価尺度(MEDSCI)および自閉症スペクトラム指数(AQ-J)を用いたアンケート調査を行った。小・中・高校生の抑うつ傾向、躁傾向、自閉傾向を調査し、相互の相関関係を検討した。全体の12.4%(小3:3.7%、小5:3.9%、中2:13.3%、高2:19.4%)に抑うつ傾向を認めた。躁傾向は6.4%(小3:2.7%、小5:4.9%、中2:7.4%、高2:8.3%)に認めた。また、全体の5.8%(小3:3.0%、小5:3.2%、中2:6.6%、高2:7.8%)に自閉傾向を認めた。相互の関係としては、抑うつ傾向と躁傾向、および抑うつ傾向と自閉傾向に相関関係が認められた。その結果を日本児童青年精神医学会誌に投稿中である。 小児科発達障害クリニックである楡の会子どもクリニックに通院中の気分障害(うつ病性障害、双極性障害)75例の臨床症状、併存障害comorbidity、転帰について検討した。その内訳は、大うつ病性障害60例、気分変調性障害2例、双極性障害13例であった。大うつ病性障害60例においては、うつ病のみでcomorbidityがないものは26.7%、comorbidityが1つの場合が56.7%、comorbidityが2つの場合が16.7%であった。それぞれの臨床的特徴および転帰を検討した。その結果を日本児童青年精神医学会誌に投稿した。論文は受理され、現在印刷中である。その中の双極性障害のみ取り上げ、経過、併存障害comorbidity、転帰を検討した。その結果は日本児童青年精神医学会誌に投稿中である。 以上の研究をまとめたものを、「子どもの双極性障害-DSM-5への展望-」と題して金剛出版から2011年11月に上梓した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
北海道の小・中・高校生3,500人に対し、自己記入式うつ症状評価尺度(QIDS-J)、躁症状評価尺度(MEDSCI)および自閉症スペクトラム指数(AQ-J)を用いたアンケート調査に関しては、順調に調査が進み、解析も終了した。現在、日本児童青年精神医学会誌に投稿中である。調査対象は、小学3年生から高校2年生の3,500名にのぼり、海外を含めても過去最大の対象数となった。計画通りに進んでいると考えられる。 小児科発達障害クリニックに通院中の気分障害(うつ病性障害、双極性障害)の臨床研究も概ね計画通りに進んでいる。大うつ病性障害60例の臨床症状、併存障害comorbidity、転帰についての論文は受理され、現在印刷中である。双極性障害の経過、併存障害comorbidity、転帰に関する研究は、現在日本児童青年精神医学会誌に投稿中である。 これらの研究をまとめたものを、「子どもの双極性障害-DSM-5への展望-」と題して金剛出版から2011年11月に上梓した。 以上のように、平成23年度に行う予定であった北海道の小・中・高校生の疫学調査は終了し、目標は達成できたと考えている。後は論文の受理を待つのみである。さらに、平成24年度に行う予定の臨床研究も順調に進行している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
北海道の小・中・高校生を対象とした疫学調査は、今後も事例数を増やしていく予定である。また、うつ症状評価尺度、躁症状評価尺度、自閉傾向評価尺度に加えて、不安尺度、PTSD傾向評価尺度なども行っていく予定である。今回の東日本大震災の影響として、うつ症状、躁症状、不安症状などがどのように変化しているのか調査したいと考えている。 小児科発達障害クリニックに通院中の双極性障害の経過、併存障害comorbidity、転帰に関する研究を重点的に行う予定である。現在気分障害として経過観察中の患者が113名通院している。その患者のうち33名が双極性障害と診断されている。うつ病で通院中の患者の何%が双極性障害に発展していくのか、双極性障害と診断された33名が今後どのような経過をたどるのかを検討していきたいと考えている。 以上の研究成果を、海外および国内の学会に発表し、論文化して公表していく予定である。さらに、上記を総合した著書も出版する予定である。 また、子どもの気分障害(うつ病性障害および双極性障害)のパンフレットを作成し、調査に協力してくれた小・中・高校へ配布する予定である。また、外来患者に対してもパンフレットを配布し、心理教育(病気のわかりやすい説明)を行っていく予定である。そのために、カラーレーザー・プリンターを購入する予定である。さらに、調査に協力してくれた学校を訪問し、デジタルカメラで撮影する予定である(デジタルカメラを購入予定)。また、患者に許可を取り、経時的に、全身像、顔写真を撮影し、記録に残していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の未使用額は1,001円であった。子どもの気分障害(うつ病性障害および双極性障害)のパンフレットを試作し、プリント用紙に印刷する予定であったが、パンフレット作成が間に合わず、試作用のプリント用紙のために残しておいた予算を執行することができなかった。 平成24年度は子どもの気分障害(うつ病性障害および双極性障害)のパンフレットを作成するため、そのプリント用紙を購入する予定である。
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