研究課題
児童・青年期の双極性障害の症例について、診断、臨床的特徴、遺伝歴、comorbidity、経過および転帰について検討した。「楡の会こどもクリニック」児童精神科外来を初診し、双極性障害と診断された8~17歳までの児童・青年30例(男子8例、女子22例)を対象に後方視的なカルテ調査と経過・転帰について検討を行った。双極性障害と診断された30例の内訳は、双極I型障害が1例(3.3%)、双極II型障害が12例(40.0%)、特定不能の双極性障害が17例(56.7%)であった。気分障害の遺伝歴は、児童期発症群の方が青年期発症群よりも有意に多いことが示された。併存障害については児童期発症群の方が青年期発症群よりも有意に広汎性発達障害と注意欠如・多動性障害を併存しやすいことが示された。経過の特徴として、児童期発症群の方が青年期発症群に比べて、「混合状態」が有意に多くみられることが示された。青年期発症群の中では、混合型よりも急速交代型の方が有意に多くみられることが示された。転帰については、約2年7ヶ月の平均治療期間で、56.7%が改善または寛解を示した。その時点では児童期発症群と青年期発症群の間に有意な差は認められなかった。児童期発症群は、気分障害の遺伝歴が多く、広汎性発達障害と注意欠如・多動性障害の併存が多く見られ、躁病相とうつ病相が混合した経過をたどりやすいと考えられた。青年期発症群は、不安障害との併存が多く見られ、経過については児童期と比べて躁病相とうつ病相の区別が明瞭となりやすいと考えられた。上記の内容は「児童青年精神医学とその近接領域」に掲載された。
2: おおむね順調に進展している
小児科発達障害クリニックである「楡の会子どもクリニック」児童精神科外来を受診し、双極性障害と診断された児童・青年30例(男子8例、女子22例)を対象とした臨床的研究を行った。わが国において児童・青年期の双極性障害の多数例を対象とした臨床研究は初めてであり、その意義は大きいと思われる。この内容は、日本児童青年精神医学会の学会誌である「児童青年精神医学とその近接領域」の2014年2月号(55: 1-14, 2014 )に掲載された。さらに、その後の経過および転帰調査が進行中である。以上より、研究は計画通りに進んでいると考えられる。
小児科発達障害クリニックに通院中の気分障害の児童・青年期患者は109例である。その患者のうち79例がうつ病性障害、30名が双極性障害と診断されている。うつ病で通院中の患者の何%が双極性障害に発展していくのか、双極性障害と診断された30名が今後どのような経過をたどるのかを検討していきたいと考えている。また、以上の臨床研究から、どのような治療が有効かを検討していく。現在までに得られた成果から、「子どものうつ 心の治療-5ステップ・アプローチについて-」(新興医学出版社)という治療を中心に解説した著書を出版する予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
児童青年精神医学とその近接領域
巻: 55 ページ: 1-14
巻: 54 ページ: 27-41
日本医事新報
巻: 4645 ページ: 40-46
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10.2147/NDT.S42702
児童心理
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http://www.hs.hokudai.ac.jp/denda/