研究課題/領域番号 |
23591688
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
傳田 健三 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (10227548)
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研究分担者 |
井上 猛 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70250438)
田中 輝明 北海道大学, 大学病院, 講師 (00374447)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 双極性障害 / うつ病 / 重篤気分変調症 / 児童期 / 青年期 / 発達障害 / 併存障害 / 転帰 |
研究実績の概要 |
児童・青年期のうつ病、双極性障害、および重篤気分変調症((Disruptive Mood Dysregulation Disorder:DMDD)との関係について自験例をもとに検討した。札幌市内の小児科発達障害クリニックである「楡の会こどもクリニック」児童精神科外来を初診し、DMDDの診断基準を満たし、現在治療継続中の症例は11例であった。その臨床的特徴は以下の通りであった。 ①男子9例、女子2例と男子優位であった。②年齢は平均10.1±2.8歳であった。③診断は、ADHD+自閉スペクトラム症(ASD)が4例、ADHD+ASD+ODDが3例、ADHD+ASD+双極性障害が1例、ASD+ODDが1例、ASD+反応性愛着障害が1例、DMDD+うつ病(DSM-5発刊後に診断)が1例であった。④薬物療法は10例に行われ、リスパダール4例、アリピプラゾール2例、アトモキセチン3例、メチルフェニデート1例、セルトラリン1例であった。⑤精神療法として、7例において臨床心理士による個別セラピーが行われ、2例において発達支援センターの個別セラピーが行われていた。⑥4例の親がうつ病の既往があった。2例の親が自死を遂げていた。4例の両親が離婚し、1例の親が病死していた。4例が親から虐待を受けており、3例の父親が母親へDVを行っていた。⑦3例がうつ病を併存していた。 以上をまとめると、自験例の中にもDMDDと診断できる患者は存在した。男子に多く、これまでの診断名は、ADHD, ASD, ODD, 反応性愛着障害、双極性障害などであり、かつ同時にいくつかの疾患を併存していた。遺伝歴としては、11例中4例の親がうつ病であった。また11例中3例が経過中にうつ病を併存したことから、うつ病との関連が示唆された。双極性障害との関連は現時点では明らかではない。今後さらに経過を観察する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小児科発達障害クリニックである「楡の会子どもクリニック」児童精神科外来を受診し、重篤気分変調症(DMDD)の診断基準を満たし、現在治療継続中の11例を検討した。わが国において児童・青年期のDMDDを対象とした臨床研究は初めてであり、その意義は大きいと思われる。うつ病および双極性障害との異同を検討していきたい。この内容を含む著書「子どものうつ 心の治療-5ステップ・アプローチについて-」(2014年10月,新興医学出版社)を出版した。以上より、研究は計画通りに進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
小児科発達障害クリニックに通院中の気分障害の児童・青年期患者は120例である。その患者のうち79例がうつ病性障害、30名が双極性障害、11例が重篤気分変調症(DMDD)と診断されている。DMDDはうつ病および双極性障害とどのような関連をもつ病態なのか、うつ病の子どもたちは何%が双極性障害に発展していくのか、双極性障害およびDMDDと診断された症例が今後どのような経過をたどるのか検討していきたいと考えている。 以上の臨床研究から、どのような治療が有効かを検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費を削減しすぎたため、次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
確実に経費を確認しながら使用していく所存である。
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