研究課題/領域番号 |
23591692
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
川勝 忍 山形大学, 医学部, 准教授 (00211178)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 嗜銀顆粒性認知症 / タウオパチー / MRI / VSRAD / SPECT / アポリポ蛋白E |
研究概要 |
MRI水平断画像で側頭葉内側前方の萎縮を嗜銀顆粒性認知症(DG)の診断の指標として、山形大学医学部附属病院物忘れ外来および篠田総合病院認知症疾患医療センターを受診した症例についてその頻度、voxel-based specific regional analysis system for Alzheimer’s disease (VSRAD)所見、アポリポ蛋白E(ApoE)多型について検討した。本年度の検討対象は血管性認知症を除く変性性認知症169例で、若年発症アルツハイマー病(EOAD)27例、晩期発症型アルツハイマー病(LOAD)91例、レビー小体型認知症(DLB)19例、DG32例であった。DGは晩期発症認知症例142例中32例で、23%を占めており、従来の連続剖検例での5-10%よりも高い頻度であった。したがって、DGは高齢者の認知症で、少なくともDLBと同程度にはある、決して稀ではない疾患である可能性が高い。また、VSRADの海馬傍回の萎縮度を示すZスコアでは全例2以上で、4以上の高度の例が大部分であった。ApoEでは、4型を一つ以上もつ頻度は、EOAD33.3%、LOAD59%、DLB47%と比較して、DGでは18.8%と低かった。一方、2型を一つ以上もつ頻度は、EOAD7.4%、LOAD2.2%、DLB0%と比較し、DGでは19%と高かった。MRI上の側頭葉内側前方の萎縮を指標として診断したDGでは、アルツハイマー型認知症とは対照的に、アミロイド沈着に促進的に働くE4型の頻度低く、アミロイド沈着に防御的に働くE2型の頻度が高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した症例数の検討を行うことができた。また、MRI上の側頭葉内側前方の萎縮はDGの指標になりうること、予想よりも高齢者認知症におけるDGの頻度は高い可能性があることが分かった。DGの頻度については、新規患者の連続例を用いた臨床ベースの頻度を出す必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらに、症例を増やすとともに、臨床的指標との関係、連続例における正確な頻度、SPECT所見との関係もふくめて検討していく予定である。 本年度の検討では、MRIのVSRAD解析は、SPM2を用いたものだったが、SPM8を用いた、改良版が2012年2月にリリースされたので、DG例についても両者を合わせて検討していくとともに、これまで蓄積した症例について再解析を行う。また、脳萎縮のパターンについては、意味性認知症類似の側頭葉外側前方の左右差をもった症例も含まれることから、意味性認知症との比較を含めて検討して行きたい。さらに、DGはタウオパチーの一種であることから、他のバイオマーカーとして、脳脊髄液中のタウ蛋白上昇の有無をDGと診断された例の一部で可能な例で検討を計画したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
さらに全体で200症例程度(うちDGは20-30例と予測)を増やして検討していくが、とくにアポリポ蛋白E多型の測定のための費用が中心となる。
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