研究概要 |
本研究は、薬物療法に対して治療抵抗性を示す気分障害患者を対象に、インスリン抵抗性の異常が治療抵抗性の形成に関与する病態メカニズムを解明することを目的として、脳体積測定法(Voxel-Based-Morphometry; VBM)、頚動脈内膜・中膜複合体厚(intimal-media. thickness; IMT)および非侵襲的血管内皮機能検査を施行し、中枢・末梢における動脈硬化関連因子と治療抵抗性の関連性を調査・検討するものである。 気分障害の治療を巡っては、新規抗うつ薬の開発や非定型抗精神病薬の併用療法など、多様な選択肢が出現したにも関わらず、寛解率そのものは必ずしも向上しておらず、依然として約20%が薬物治療に対して治療抵抗性を示している。治療抵抗性気分障害の病態メカニズムや治療法に関する研究は、大きく立ち遅れていると言わざるおえないのが現状である。本研究は、これら治療抵抗性気群障害患者群に焦点を当てて、中枢および末梢における動脈硬化因子の定量評価を行い、病態生理学的背景の検討を行う点に大きな意義がある。 本研究の今回の成果としては、基礎研究において、持続的なセロトニン再取り込阻害薬が、ラットにおいて、インスリン抵抗性を抑制するアヂポネクチンを増やすとの結果を得ることが出来た。さらに、臨床研究についても現在のところ資料の収集を継続しており、治療抵抗性気分障害患者のインスリン抵抗性とVBM, IMTに関するデータも蓄積されつつある。解析を終え次第、論文にて発表して行く予定である。
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