研究課題/領域番号 |
23591698
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
布村 明彦 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (60241436)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 認知症 / アルツハイマー病 / 加齢脳 / 酸化ストレス / RNA / 認知機能障害 / アメリカ合衆国 |
研究概要 |
加齢脳およびAlzheimer病(AD)脳の大脳皮質神経細胞におけるRNAの酸化傷害ならびにmicroRNA発現異常について、剖検脳を用いて免疫組織化学的手法ならびにin situ hybridization法によって検討した。神経細胞内RNAの酸化傷害レベルは対照例(0.3~86歳)において加齢に伴って増加していた。また、RNAの酸化傷害レベルは、認知機能障害のない発症前期(preclinical stage)のADでは対照と有意差がなかったが、認知機能障害を伴う最軽度ADおよび軽度ADでは顕著な増加が認められた。以上のことから、神経細胞内RNAの酸化傷害はAD初期の認知機能障害発現に関連していることが明らかになった。他方、microRNA発現については、locked nucleic acid (LAN)プローブを用いたin situ hybridization法による検出結果の再現性について検討を重ねている段階であり、今後、神経細胞内RNAの酸化傷害と関連してmicroRNA発現異常が認められるかどうか、時系列的かつ空間的解析によって明らかにされることが期待される。 以上の成果の一部は、国際学術誌に公表した (Nunomura A, et al. The earliest stage of cognitive impairment in transition from normal aging to Alzheimer disease is marked by prominent RNA oxidation in vulnerable neurons. Journal of Neuropathology and Experimental Neurology 71(3):233-241, 2012)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度中に、加齢脳およびAlzheimer病(AD)脳の大脳皮質神経細胞におけるRNAの酸化傷害に関する研究結果をとりまとめ、The American Association of Neuropathologists (AANP)のOfficial JournalであるJournal of Neuropathology and Experimental Neurology 誌(Impact Factor: 4.19 )に投稿し、掲載に至ったことは大きな成果であった。すなわち、神経細胞内RNAの酸化傷害がAD初期の認知機能障害発現に確かに関連していることを示し、その研究結果が一流国際学術誌のpeer reviewを経て受理・公表されたことは本研究遂行上の重要な第1段階を達成したといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の主題は、AD脳におけるRNAの酸化傷害とmicroRNA発現異常との関連性の解明であるから、今後は、in situ hybridization法によってmicroRNAを、安定的に再現性を保って検出できる技術を確立する必要がある。そのうえで、RNAの酸化傷害とmicroRNA発現との関連性を、加齢からpreclinical stageを経てAD初期の認知機能障害発現に至る過程の時系列的な見地から解析すると同時に、脳部位による分布や脳内異常蛋白質蓄積と関連する局在といった空間的な見地からも解析を進める。以上の検討から、AD脳の病態にRNAの酸化傷害とmicroRNA発現異常がどのように関与しているのかを解明する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究の主体をなすlocked nucleic acid (LAN)プローブを用いたin situ hybridization(ISH)法や免疫組織化学的アプローチを成功させるためには、検出感度・特異性の高い良質のmicroRNAプローブや免疫抗体を入手することが必須である。また、良質のプローブや抗体を用いてもISH/免疫反応の1ステップにでも不備があれば、ISH/免疫染色結果は検討に適さないことは述べるまでもない。 平成23年度では、他研究経費を用いてすでに購入済みであった試薬を本研究に試用したために、次年度への繰越金が生じた。次年度では、当初の予定使用額に繰越金も組み入れ、慎重に吟味・選定された各種市販プローブ/抗体およびその他の市販試薬の購入に充てる。 旅費については、中間的成果の国内および国際学会での公表のために、国内・国外旅費を使用する。
|