研究課題/領域番号 |
23591698
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
布村 明彦 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (60241436)
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キーワード | 認知症 / アルツハイマー病 / 加齢脳 / 酸化ストレス / RNA / ミトコンドリアDNA / 認知機能障害 / アメリカ合衆国 |
研究概要 |
加齢脳およびAlzheimer病(AD)脳の大脳皮質神経細胞におけるRNAの酸化傷害、microRNA発現異常、およびミトコンドリアDNA傷害について、剖検脳を用いて免疫組織化学的手法ならびにin situ hybridization法によって検討した。 前年度の成果として、神経細胞内RNAの酸化傷害レベルは対照例(0.3~86歳)において加齢に伴って増加すること、および、RNAの酸化傷害レベルは、認知機能障害を伴う最軽度ADでは顕著な増加が認められることが明らかになった(Nunomura A, et al. J Neuropathol Exp Neurol 71(3):233-241, 2012)。 今年度の成果として、画像解析による半定量的検討の結果、加齢脳における神経細胞内RNAの酸化傷害とミトコンドリアDNA傷害(共通4977塩基対ミトコンドリアDNA欠失)との間に有意な正相関(R2=0.86)が認められた。他方、神経細胞内microRNA発現については、locked nucleic acid (LAN)プローブを用いたin situ hybridization法による検出の再現性に関して慎重に検討中である。 今後、神経細胞内RNA酸化傷害やミトコンドリアDNA傷害と関連してmicroRNA発現異常が認められるかどうか、時系列的かつ空間的解析によって明らかにされることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度(平成23年度)中に、加齢脳およびAlzheimer病(AD)脳の大脳皮質神経細胞におけるRNAの酸化傷害に関する研究結果をとりまとめ、公表した ((Nunomura A, et al. J Neuropathol Exp Neurol 71(3):233-241, 2012);Impact Factor: 4.19 )。本論文では、神経細胞内RNAの酸化傷害がAD初期の認知機能障害発現に関連していることを示した。 今年度(平成24年度)の成果として、共通4977塩基対ミトコンドリアDNA欠失を標識するプローブを用いたin situ hybridization法によって脳組織切片上でミトコンドリアDNA傷害を検討したところ、加齢脳における神経細胞内RNA酸化傷害とミトコンドリアDNA傷害との間に推計学的に有意な関連性(R2=0.86)を見出すことができた。以上のミトコンドリアDNA傷害の検討は、当初の研究計画には盛り込まれていなかった項目であるが、本研究遂行中にin situ hybridization法の応用範囲を拡大することで得られた予想外の成果であった。 他方、神経細胞内microRNA発現については、locked nucleic acid (LAN)プローブを用いたin situ hybridization法による検出の再現性を確立するために、さらなる慎重な検討の積み重ねを要すると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主要課題のひとつは、AD脳におけるRNAの酸化傷害とmicroRNA発現異常との関連性の解明であるから、今後は、in situ hybridization法によってmicroRNAを、安定的に再現性を保って検出できる技術を確立する必要がある。そのために、検出感度・特異性の高い良質のmicroRNAプローブの吟味やin situ hybridization各種実験ステップの再検討を行う。 そのうえで、RNA酸化傷害やミトコンドリアDNA傷害とmicroRNA発現との関連性を、加齢からpreclinical stageを経てAD初期の認知機能障害発現に至る過程の時系列的な見地から解析すると同時に、脳部位による分布や脳内異常蛋白質蓄積と関連する局在といった空間的な見地からも解析を進める。 以上の検討から、最終年度である次年度中に、AD脳の病態にRNAの酸化傷害、ミトコンドリアDNA傷害、およびmicroRNA発現異常がどのように関与しているのかを解明すべく、研究を推進・完遂させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(最終年度)には、locked nucleic acid (LAN)プローブを用いたin situ hybridization(ISH)法や免疫組織化学的アプローチの再現性を確立するために、検出感度・特異性の高い良質のmicroRNAプローブや免疫抗体を入手することが必須である。また、良質のプローブや抗体を用いてもISH/免疫反応の1ステップにでも不備があれば、ISH/免疫染色結果は検討に適さないことは述べるまでもない。慎重に吟味・選定された各種市販プローブ/抗体やその他の市販試薬の購入に研究費を充てる。 なお、予定された試薬購入の一部見送りがあったため、今年度に124,537円の未使用金が生じたが、次年度請求額と合わせて試薬購入に充てる計画である。 旅費については、成果の国内および国際学会での公表のために、国内・国外旅費を使用する。
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