カタトニアは心身の働きを自分の意志でコントロールすることが困難となり、生命を脅かすこともある重篤な神経精神医学的症候群である。従来の診断学では主に統合失調症と関連づけられていたが、実際には老年期うつ病やその他の病態において出現する頻度が高く、診断概念と実態がかけ離れており誤診が多いことが問題となっていた。近年カタトニアの診断基準の見直しがなされているが、高齢者においては類似した症状も多く、依然診断は困難である。本研究では、初老期以降のうつ病およびその類縁の精神障害の症例の詳細な経過観察を通じて、カタトニア症候群の臨床経過について検討し、診断に役立つ経過類型論という観点から整理することができた。
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