研究課題
本研究の目標は、組織病理的アプローチによって、統合失調症の病因・病態を解明することにある。すなわち、患者死後脳における神経構築の形態学的な変化について免疫組織学的手法などを用いて観察し、本疾患の病因・病態を明らかにすることである。今回以下の1)~3)の3項目について成果が得られた。1)統合失調症の遺伝子改変モデル動物であるDISC1ノックアウトマウスを用いて、ドーパミン神経ネットワークの組織上での発現を観察した。その結果、前頭葉眼下面の皮質において、正常対象と比較して、モデル動物においては、ドーパミン神経線維の発現低下がみられた。このことは、モデル動物において前頭葉のドーパミン神経ネットワークの不全があると推量され、臨床症状の前頭葉機能不全に関連すると考えられた。2)同様にDISC1ノックアウトした疾患モデルマウスにおいて、GABA神経系ネットワークについても検討した。その結果、前頭葉眼下面の皮質において、正常対象と比較して、モデル動物においては、GABA神経細胞の発現低下がみられた。このことは、同様にモデル動物の前頭葉におけるGABA神経系の機能低下を反映していると考えられた。1)と2)の結果は、ヒト死後脳でも同様の傾向がみられた。3)神経画像研究で再現性をもって報告されている上側頭回の萎縮について、実際のヒト死後脳の古典的神経病理標本から計測をおこなった。その結果、統合失調症脳の上側頭回の白質では加齢の影響をより強く受け、当該疾患における白質の脆弱性が示唆された。この現象の病因として、神経ネットワークの障害が想定されていることから、上側頭回皮質におけるグリア細胞(特にミエリンの髄鞘)の発現について、精神疾患の既往のない死後脳でのそれと比較した。その結果、ミエリン髄鞘の指標であるMOGタンパクの発現が、統合失調症症例で、正常対象と比較して減少している傾向がみられた。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)
精神科治療学
巻: 29 ページ: 325-330
Sci Rep
巻: 3 ページ: 2587
10.1038/srep02587
Psychogeriatrics
巻: 13 ページ: 99-102
10.1111/j.1479-8301.2012.00430.x
Nagoya J Med Sci.
巻: 75 ページ: 11-28