研究課題/領域番号 |
23591702
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
岡野 禎治 三重大学, 保健管理センター, 教授 (90169128)
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研究分担者 |
杉山 隆 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (10263005)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | postnatal depression / PMDD |
研究概要 |
20代後半~30代の女性にみられる月経前不快気分障害(PMDD)の発病年齢は、女性の出産年齢に相当する。我々の後方視的先行研究では、産後うつ病女性の中でPMDDが発現頻度が高いことは判明した。PMDDの好発時期については、現在のところ不明であるが、本研究では、産褥期の性周期の再開後にPMDDが発生するのか、あるいは産後うつ病にPMDDが併存しやすいのか、その病態発生を明らかにするができる。そこで、前方視的調査によって、出産前後のPMDDの有病率と社会心理的要因との関係を比較することでPMDDの病態発生を特定することにした。その方法は、産褥期における月経の再開時期から少なくとも3回の性周期の期間を追跡して、PMDDの発現率について調査する。PMDD群と非PMDD群における社会心理学的要因、産科的要因、性格要因、うつ病(double depression)の有無について相関を観察する。産褥期のPMDDの好発しやすいことが実証できれば、女性のメンタルヘルスに大きな影響を与えるPMDDの啓発活動、SSRIによる薬物療法の早期治療によって、周産期の女性の精神的健康度やQOLを向上することができる。また産後うつ病(PND)からPMDDに到る発症メカニズムの説明に、多数の危険要因が想定できることからも、ハイリスク妊産褥婦を同定できる。 今年度は、PMDDの社会心理的要因の追加、PMDDの危険因子の要因、母乳との関連を明らかにするために、プロトコールを再検討して、最終版を作成した。また、臨床現場との今後の研究実施のための打ち合わせを重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点では、1)プロトコールの作成について再検討した。プロトコールの作成に関しては、今年度はPMDDの症状構造について、これまで検討されていないため、連続量を示して、因子分析が可能かどうか検討することを加えた。PSM-IV-TRのPMDDの診断基準に合致するかどうかに関係なく、対象者500名の全員について、月経再開時点で代表的なコーピング尺度(COPE)や月経随伴症状日本語版(MDQ)を実施して因子構造を明らかにすることにした。さらに因子構造から得られた下位尺度得点を基準にして、クラスター分析で群わけして、PMDDの診断的検討を加えることになった。PMDDの危険因子として、家族歴(FH-RDC)、心理社会的指標、PNDの重症度測定に対してハミルトンうつ病尺度(HDS)を加えることにした。また、PMDDの出現が性周期再開の時期と関連する仮説を実証するため、母乳、人工栄養との差異を考慮するため、母乳自己効力感、さらに時の気質と早期離乳との関係についても、注目した尺度を検討することにした。2)三重大学病院母性棟スタッフとの共同研究説明会を開催したが、2011年12月の三重大新病院の新規開設という大エベントと重複した。そのため産科病棟でのトラブルを回避するため、産褥婦からのエントリーの時期を当初の予定よりも、6ヵ月遅らせて開始することに配慮した。3)産婦人科教室の新教授の選出が当初の2011年4月から2011年9月に遅れたため、最終的な共同研究態勢づくりに要する時期がずれた。 以上の理由から、エントリーの開始時期は遅れているが、連携体制のもとで次年度からの実施できる態勢にある。
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今後の研究の推進方策 |
プロトコールの最終草案を作成して、病棟での役割分担を医療従事者および研究協力者と調整した。2012年度から、出産女性の既往のPMDDの有無、出産女性における性周期再開後のPMDDの有病率、産褥期におけるPMDD大うつ病性障害の関連について調査を行い、これらのデータの回収を行う。三重県下の産婦人科医療機関などの協力も念頭にいれて、最終調査対象500名まで到達する。また、産科医にPMDDの構造化面接のための研修を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本調査開始が、三重大学医学部産婦人科教室の教授の選出の遅れ、三重大学病院の新病棟への移転などの状況から、23年度未使用の 1,008,650円が生じた。来年度以降に請求する科研費500,000円と合わせて、主に以下のように研究計画を予定している。 妥当性と信頼性を明らかにしたPMDDに関連した各種尺度を完成して印刷を実施する。さらに基礎体温計を購入する(物品費700,000円)。PMDD調査パックを用いて、サンプリング開始して、データの送付、回収を行う(役務費200,000円)、そして人手を要することから研究補助者への人件費を計上する(200,000円)。また、情報収集のための専門学会への参加や研究打ち合わせを行う(旅費200,000円)。 設備備品については、既存のものを使用する予定であり、新たな購入はない。
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