研究課題/領域番号 |
23591703
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田上 真次 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40362735)
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研究分担者 |
大河内 正康 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90335357)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | γセクレターゼ / プレセニリン / アルツハイマー病 / アミロイドβ / Notchシグナル |
研究概要 |
近年、プレセニリンやβAPPに病原性変異がなくともNSAIDなどの一部の薬剤(γ-secretases modulators; GSM)がγ切断の多様性を変化させ、アルツハイマー病の病原性物質であるAβ42の比較的産生量を増減させることがわかってきた。興味深いことに、我々はこれらの薬剤はNotch-1のAβ様ペプチドを切り出すS4切断にも同様の効果を及ぼし、産生されるNβ分子種の組成を変化させることを発見した(Okochi, M., Tagami, S. and Takeda, M et al Secretion of the Notch-1 Abeta-like peptide during Notch signaling. J Biol Chem, 2006)。 本年度はγセクレターゼによるNICD産生を担うS3切断の正確さが、Aβ42の比較的産生量を増減させる効果を持つ薬剤により変化するかどうかを検討した。Notch-1由来cDNA、βAPPを共発現する細胞をAβ42比較的産生量を下げる活性を持つ薬剤数種およびAβ42比較的産生量を上げる活性を持つ薬剤数種で処理したところ、分泌されるAβ42量が変化する薬剤濃度において、NICD-Vの量とNICD-Sの量の比に大きな変化は認められなかった。つまりNSAIDsを含むGSMは膜中央部付近で起こるγ/S4切断の正確さは変化させるが、膜と細胞質の境界で起こるS3切断の多様性には影響を及ぼさないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルツハイマー病の病原性物質であるAβ42の産生機構を詳細に調べることは、アルツハイマー病の診断治療薬開発に直結する。まず本年度はAβ42産生比を変化させる薬剤(GSM)がγセクレターゼによるS3切断の多様性に影響を及ぼすかどうかを明らかにすることを目標とした。NSAIDsのみならず、第2世代のGSMに関しても検討し、結果を得ることが出来たので概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はさらに解析を進め、NICDを産生するS3切断の多様性が生理的因子により変化するかどうかを検討する。またAβ産生に上流に位置し、AICDを産生するε切断に関しても検討を進める。AICDはβAPP由来の分子でNICDに対応し、膜と細胞質の境界でγセクレターゼによるε切断を受けて産生される。我々はこのε切断の正確さはpHやエンドサイトーシス、切断が起こる細胞内局在などの生理的要因によって変化しやすいことを以前報告した(Fukumori, A., Okochi, M., Tagami, S.,et al Presenilin-dependent gamma-secretase on plasma membrane and endosomes is functionally distinct. Biochemistry, 2006)。一方、Aβを産生するγ切断の正確さはこれらの要因により変化が乏しい。次年度はS3切断の多様性について基本的な知見を得るためにトポロジー的にε切断に対応するS3切断の正確さが同じように生理的要因により変化しやすいかどうかを調べる。まずエンドサイトーシスとpHが及ぼす影響に関して検討する。具体的には細胞のエンドサイトーシスをDynamin-1のドミナントネガティブ変異体(Dyn-1 K44A)を発現することで阻害し、エンドサイトーシスを止めた状態の細胞から抽出した膜分画を用いてセルフリーアッセイを行う。各分画におけるNICD-VとNICD-Sの産生比を検討し、S3切断の正確さが切断の起こる細胞内局在で変化するかどうかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の90%前後は蛋白ペプチド解析試薬一式や遺伝子組み換え実験試薬一式などの消耗品の購入に充てる予定である。10%程度は研究発表のための印刷費や学会参加費に用いる予定である。
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