研究課題/領域番号 |
23591708
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
横田 修 岡山大学, 大学病院, 助教 (60379732)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 器質精神病 / 神経変性疾患 / 神経病理学 |
研究概要 |
統合失調症と老年期精神障害患者の約120例の脳組織における,認知症疾患の神経変性所見を組織病理学的に検討している.評価している病変は,高齢者の認知機能に影響を与えうる様々なもので,神経細胞脱落所見,脳梗塞などの脳血管病変,次いでタウ蛋白,βアミロイド,αシヌクレイン,TDP-43,FUS蛋白などの病変である.これらの有無と程度を国際的な基準で評価し,アルツハイマー病,レビー小体型認知症,ピック病,皮質基底核変性症,進行性核上性麻痺,グレイン型認知症,TDP-43陽性封入体あるいはFUS陽性封入体をもつ前頭側頭葉変性症といった主要な認知症疾患の合併や,その軽度病変の有無を評価している.以上の検討から,老年期の統合失調症や老年期精神障害患者に見られる認知機能障害や精神症状が,変性疾患の合併でどの程度説明されうるのかが明らかになると見込んでいる.以上の検討から,認知機能低下や精神症状を呈した高齢者の臨床診断の精度向上と,適切な治療方針の決定に寄与するデータが得られると考えている. 現在の所,統合失調症20例以上,老年期精神障害50例以上の染色と病理学的評価が終了した.老年期精神障害は臨床記録を参照した結果,認知症疾患が含まれていたのでこれを除外し,そのため最終的には症例数は60例弱程度になると思われる.老年期精神障害例に関しては,検討には十分な例数と考えられ,また,おおよその臨床病理学的傾向は確認できた.このため,必要な症例の臨床記録の確認を進めている.統合失調症症例に関しては,今後も検討症例が追加される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
剖検症例約70例について染色が終了し,その病理学的評価を進めている.最終的には100-120例程度を見込んでおり,特に老年期精神障害の病理学的基盤に関してはおおよその傾向は把握できている.なお,一部の例はリサーチの論文に対象例として含めるだけでなく,一例報告あるいは数例をまとめた症例報告とすべき知見が確認できており,論文発表する予定である.これについては学会発表はすでに行った.平成24年度の学会での発表も演題登録されており,行う予定である.また,統合失調症症例を検討しているなかで,タウ病理に関して予想外の知見をえたので,検討部位の範囲を当初より広げて染色を追加しつつ評価を進めているところである.
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今後の研究の推進方策 |
まず,老年期精神障害に関しては症例を確定させ,病理学的検討を終了させる.それに合わせて,必要な例で臨床記録の確認を進める.老年期精神障害の病理背景に関する検討はこのまま平成24年度前半でまとまった結果が得られると思われ,平成24年度前半に論文執筆に入れる予定である.なおこの研究に含められた症例シリーズの中で,リサーチの論文に対象例として含めるだけでなく,一例報告あるいは数例をまとめた症例報告とすべき所見が確認できている症例が10例程度ある.このような小規模な報告の形で執筆すべきテーマは3つ現在確認できており,全体をまとめるリサーチの論文とは別に,一部ではその執筆をすでに開始している.一例については現在英文校正に提出中で4月中には一回目の投稿予定であり,平成24年度中にいずれかの雑誌に受理に至ると思われる.数例のまとめの英文報告に関しては執筆を開始したところで平成24年度内に投稿予定である. 統合失調症症例に関しては,検討している中で,タウオパチーの基底核・脳幹病変に関して予想していなかった知見を得ており,そこに焦点を当てた切り口でも病態を検討すべきと判断し,対照例40例程度を選び,染色を開始している.これら対照例の病理学的評価を進め,統計解析に持ち込む.ここまでが24年度の予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
染色に必要な試薬,一次抗体,パラフィン等の基本的材料に研究費を用いる.学会発表のための交通費にも用いる.別刷代金にも使用する.臨床記録を確認するための心理士への給与支払いも予想される.繰り越し分169,058円は,一次抗体や試薬の購入が予定よりも少なく済んだために発生したものであり,これらは次年度において一次抗体や試薬の購入に引き続きあてられる.
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