研究課題
神経変性を病態の基盤とする認知症疾患と,統合失調症のような機能性精神疾患では,異なる治療,リハビリテーション,ケアの方針が必要である.しかし様々な精神症状を有す高齢者ではこの鑑別は容易でない.本研究では,①老年期統合失調症とその他の老年期精神障害患者脳における変性疾患の病理所見の頻度を検討し,次に②レビー小体病およびグレイン型認知症の剖検例における精神症状の特徴を検討する.これにより,精神症状を呈す高齢者の臨床診断の精度向上と,治療方針決定に寄与する臨床病理学的知見を得るのが本研究の目的である.平成24年度は全年度同様に対象症例について病理学的検討を続けた.これにより対象症例における変性疾患の病理と臨床的な認知機能低下の関連の大まかな傾向があきらかとなった.また先述のように,これまでの予備的な検討でレビー小体関連病理とグレイン型認知症の病変は,一部の高齢者の精神障害と関連している可能性が推測されたが,当研究室に保管されているレビー小体病(パーキンソン病やレビー小体型認知症等)とグレイン型認知症の症例群における精神症状の内容と頻度を調べた.以上の結果は24年度に日本認知症学会学術総会で発表した.発表内容を総括した物について英文誌への投稿準備を始めた.また,一部の症例について英文誌への論文発表を行った.
2: おおむね順調に進展している
40歳以上発症の精神障害例45例についての病理検索と臨床像検討はほぼ終了した.比較対照として年齢のマッチした高齢者を検討するため,当初予定していなかった東京都健康長寿医療センターのブレインバンクから71剖検例の臨床情報,病理情報,及び全例の切片提供を受けられるように手配し,解析の準備を進めている.
結果を確認するための年齢のマッチさせた健常対照高齢者剖検例の臨床像,病理像の検討に集中する.具体的には既にあるデータベースから抽出した臨床情報の解析,提供を受けた切片の染色と評価,これらを精神障害例データと比較して統計解析する事を行う.以上の結果に基づいて英文誌への結果投稿の為に論文執筆も行う.
平成24年度は外部ブレインバンクからの健常対象者剖検脳の切片提供を12月に依頼したが,先方ブレインバンクが新規研究棟への引っ越し作業と技術員の退職があり,新規技術員の募集に手間取り,切片提供は年度を超えて平成25年4月となった.このため,研究計画全体の遅滞をきたしてはいないが,この実験作業の遅延に関連して各種抗体や試薬や消耗品の購入を遅らせた.また,所属研究部局の研究棟の耐震工事着工に関連して,定期的な薬品購入も遅らせた.これらの結果,次年度使用額455,670円が発生した.この研究費と元々平成25年度に使用する予定であった研究費を合わせて,残りの研究計画を完了するために必要な標本作製,健常対照群の切片染色をはじめとする実験費用,および参考資料となる書籍の購入に必要な費用に充てる予定である.
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
Journal of the neurological Sciences
巻: 未定 ページ: 未定
10.1016/j.jns.2013.03.016
巻: 323 ページ: 147-153
10.1016/j.jns.2012.09.005
巻: 312 ページ: 108-116
doi: 10.1016/j.jns.2011.08.008